心理療法とは、心理学の知見を使って心の問題を改善する方法の理論と技法の体系です。
心理療法においては、物理的・化学的手段は用いません。治療者と対話などを通して認知・情緒・行動などに変容をもたらします。
心理療法と精神療法
心理療法は英語のサイコセラピーの訳語です。しかし、臨床心理士は心理療法と訳し、精神科医は精神療法と訳すことが多いです。このように同じ言葉に違った訳語が与えられているのは、サイコセラピーには医師が開発したものと、心理学者が開発したものがあるからです。
心理療法とカウンセリングの違い
心理療法は、必ずしも言葉を媒介にするものではありません。中には来談者中心療法のように言葉のやりとりをメインにする心理療法も存在します。しかし、心理療法の中には芸術療法や遊戯療法、あるいは箱庭療法のように言葉のやり取りがメインではない治療法も存在します。また、心理療法が扱う相手の心理的問題は重い場合がほとんどです。
一方でカウンセリングは言葉のやりとりを中心にした方法です。また、カウンセリングでは軽度の心理的問題を扱う場合が多々あります。
心理療法の構造
心理療法には数多くの種類があります。しかし、心理療法が成立するための条件はある程度共通しています。その一つが心理療法の構造です。
具体的には、心理療法を行う際に以下のことを治療者と被治療者が決めます
- どれぐらいのスパンで行うか
- 1回の治療で何分かけるか
- 料金はいくらにするのか
- キャンセルのときはどうするのか
このように細かい取り決めがあって初めて、心の動きという直接見えないものを細やかに扱うことができるのです。例えば、会う時間をきちんと設定していないと、被治療者が遅れてきた際に、治療者側が「なぜ被治療者は遅れてやってきたのか? そこに隠されたメッセージがあるのではないか」などのように深い分析ができなくなってしまいます。
心理療法の種類
心理療法の幅は広く、種類もカウンセラーや臨床心理士の数だけ存在するといわれます。しかし、そんな中でも心理療法を大きく分けると、
- 精神力動的な心理療法
- 行動論的な心理療法
- 人間学的(実存的)な心理療法
の3つに分類されます。
精神力動的な心理療法
精神力動的な心理療法は、症状そのものとなる心理的な背景、特に過去の体験によって心の中につくられた生地やストレスと向き合う心理的なメカニズムなどに焦点をあてます。
代表的なものとして、
- 精神分析学
- ユング心理学
などがあげられます。
行動論的な心理療法
行動論的な心理療法では、人の症状は誤った学習によって形成された不適応的な条件反応であると考えます。その反応を取り除き、再学習することで問題解決を図ります。
代表的なものとして
- 行動療法
- 認知行動療法
などがあげられます。
人間学的(実存的)な心理療法
人間学的(実存的)な心理療法では、症状を排除すべき問題とは考えません。むしろ、被治療者を「症状を含めた1個の有機体」として、自分の意思決定により成功と幸福に向かわせます。
代表的なものとして、
- 来談者中心療法
- 実存分析
などがあげられます。