気分障害の一つです。
深い悲哀感と食欲の異常、睡眠障害、活動レベルの障害といった症状を表します。
10人に1人が一度は経験するともいわれ、若年者から老人まで発症の可能性があります。男性よりも女性に発症しやすい(2倍程度)です。
症状
以下の症状が2週間以上ほぼ毎日続く場合が、大うつ病と診断されます。
抑うつ気分
悲しい、寂しい、憂うつ、気分が晴れないといった状態になります。
興味や喜びの喪失
全ての事柄において興味がなくなります。
食欲の異常
食欲不振にともなう体重減少が生じます。あるいはその逆で、食欲過剰にともなう体重増加の場合もあります。
睡眠の異常
寝つきが悪い、眠りが浅い、朝早く目覚める、などが一般的ですが、逆に、睡眠が極端に長くなる場合もあります。
焦燥または制止
イライラして落ち着かない、頭の中の働きや身体の動作が遅くなるなどがあります。
易疲労性や気力の減退
疲れやすくなる、全身の重さを感じたりする、何をするのも面倒になるといった状態になります。
無価値観や罪責感
自分の生きる価値がないように感じる、何かにつけて自分自身を責めるといった考え方をするようになります。
思考力や集中力の減退や決断困難
考えが先に進まず、集中できないため、考えがまとまらない、些細なことも判断できないなどです。
自殺念慮
死について、ときには具体的な方法なども含めて、繰り返し考えます。
各理論におけるうつ病の原因と治療法
精神分析理論
うつ病になる要因として、幼少期の体験、具体的には口唇期への固着から生じた他者に対する過度の依存を重視します。この場合、大人になってから、愛する人を失ったときに無意識的な同一視が生じやすいとされます。愛する人に対して向けられるはずの「自分は見捨てられた」という怒りが、自分自身に向かってしまい、これがうつの原因となります。
この理論を元にした介入、治療方法では、患者に愛する人への怒りが抑圧されていることを気付かせ、クライエント自身に向けられている怒りが発散されるように促します。
認知理論
うつ病は思考によって生み出されると考えたA.T.ベックの理論が有名です。うつ病の患者においては、児童期青年期における喪失や拒絶や批判などの経験を通して形成された否定的なスキーマ(世界を否定的に見る傾向)が機能しやすくなると考えます。スキーマは特徴的な「思考の誤り(例えば、一つの事実を見ただけで世の中すべてがそうなっていると考えてしまう傾向)」によって堅固なものとなっています。それゆえ、彼らはつねにものごとは上手くいかず自分は無能であるという結論に陥りやすくなるのです。
この理論を元にした介入、治療方法ではクライエントの思考の誤りに気付かせ、クライエントの考え方を肯定的な方向へ変えて行くことを目指します。
対人関係論
うつ病の患者に特徴的な対人行動(極端にゆっくりした語り口、アイコンタクトの欠如、安心を強く求める態度、など)が他者からの拒絶を引き出してしまっているとします。このような対人行動は、うつ病の結果であると同時にうつ病の原因であるとも考えられます。
この理論を元にした介入、治療方法では、クライエントに対人関係に問題があることを気付かせます。それにより、過去よりも現在の生活に焦点をあてながら、コミュニケーションの改善について話し合います。
生物学的理論
神経化学の分野における、セロトニンなどの神経伝達物質がうつ病に関係しているという説がよく知られています。
この理論を元にした介入、治療方法では薬物療法(抗うつ薬や気分安定薬など)が中心です。