箱庭療法 (sandspiel, sand play technique)

 治療者が見守る中で、クライエントが砂の入った箱の中に玩具をおいて、何らかの表現をさせる心理療法です。

歴史

 M.ローエンフェルトが、1929年に子どもの遊びにヒントを得て、心理療法の一つに使用した世界技法が元になっています。それをD.M.カルフがローエンフェルトから箱庭療法を学びました。箱庭の理解を深めるためC.G.ユングの分析心理学の教えを導入し、これを発展させました。
 その後、この療法が日本人にとって馴染みやすいものとして1965年、河合隼雄により日本に紹介されます。

使用する道具

箱庭

 砂の入った箱で、内法が57×72×7(cm)です。水を表現するために内側が青く塗られています。

 砂の深さは1~2センチです。

ぜひ用意するべき玩具

 人、動物、木、花、乗り物、建築物、橋、棚、石、怪獣などの模型

教示

「この砂と玩具をつかって、何でもいいから、作ってみて下さい」というのが基本です。道具を見せるだけで自然と作り始めることもあり、導入の自然さが求められます。

作品を作り上げることの意味

 クライエントの自己治癒力の活性化を促します。
 クライエントの心理状態をイメージや象徴、投影の考えを元に分析していきます。その手掛かりとして、その制作過程における葛藤や手順、置かれたもの・置かれなかったものや配置などがあります。

大人への適応

 元々、言葉による自己表現の難しい子どものための技法ですが、現在は大人にも適用されています。
 子どもの場合には遊戯療法、大人の場合はカウンセリングと併用されることが多くあります。

治療者の意味

 治療者とクライエントの間には心を許せる関係をつくる必要があります。
 また、治療者はクライエントが安心感をもって取り組める環境をつくらなければなりません。箱庭療法は「自由にして保護された空間」を提供することなのです。それがクライエントの自己の治癒力を引き出すための1つの手段となっています。

治療の過程と治療者の役目

過程の観察

 どのような過程で、何をつくっているのかを観察・分析する

助言・介入

 クライエントのゆきづまりや迷走の際に助言する

完成品の説明・質問・感想など

 クライエントからの作品説明と治療者による質問、感想などコミュニケーションと作品分析をする

カルフの考え

 カルフは「人の本質は〈遊ぶ人〉だ」と考えます。全体性へと向かう過程において「喜び」と「真剣さ」、あるいは「自由」と「制約」の両極性の統合を重視しました。「喜び」だけでは軽率に流れ、「真剣さ」だけでは味気なさや絶望へと落ち込むとしました。

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