家族を1つのシステムとしてとらえ、家族全体に介入していく心理療法の総称です。
家族療法では、家族は相互に影響を与えあっている人間で構成されている1つのまとまりと考えます。
家族システムが機能不全に陥っている状態では、その影響を最も受けた家族メンバーが家族全体の病理を反映し、症状や不適応行動を示すと考えます。その例として、夫婦仲が悪く荒れている家庭の子どもが、非行に走ってしまうなどが挙げられます。
家族療法では、表面に現れた結果が特定の原因から生じるという考え方はしません。原因と結果は、相互に影響を与え合うという円環的因果律で問題をとらえます。そして、家族の円環的パターンや相互作用といった関係性そのものをとりあげます。
家族療法では、不適応行動や症状を現す個人をIP (Idenified Patient)とよびます。IPとは「患者と見なされる人」という意味です。よって、個人の治療や人格変容に目標をおきません。家族の相互作用をみながら、家族のなかにある問題解決能力を探し出しだすことが目標となります。その結果、家族としての回復を目指し、IPの問題が消失するように働きかけるのです。
家族療法の適応
特に有効とされる症状の例として、
- 摂食障害
- 不登校
- 統合失調症
が挙げられます。
特に統合失調症に関しては、家族療法を行うことで、再発率を減少させることができます。再発率の低い家族はネガティブな感情が穏やかな形で表現され、家族のそれぞれがお互いの自立を尊重できる家族です。統合失調症を持つ人々の家族に、より肯定的・明確に情報を伝えるように教育する方法は有効です。
また、小児・思春期などのように、うつ病、問題行動などには多かれ少なかれ家族療法は有効です。
家族療法の理論
家族療法の理論の基礎として、
- L.ベルタランフィの一般システム理論
- J.G.ミラーの生物体システム理論
- 精神分裂病(今の統合失調症)を中心とした家族研究を通して得られた知見と病因論的な仮説
が挙げられます。
その後、家族療法は、さまざまな流派にわかれました。しかし、1980年代に入り、諸理論を統合する試みが始まります。そして、どの流派の技法もすべての家族には適合しないという認識が共有されます。現在では、多くの治療家はいろいろな学派から発達した理論や技法を用いています。
家族療法のアセスメント
家族療法のアセスメントの段階は以下の通りです。
1.初めての接触。
2.家族との間でジョイニングを達成し、ラポートを確立する。
3.治療によって到達しようとする目標を定める。
4.家族の歴史を検討し、現在の発達段階を明確化し、ジェノグラムを作成する。
5.現在の家族機能の具合をアセスメントする。
6.診断する。
7.家族にフィードバックし推薦する治療を伝える。
8.継続的面接、診断のための処置、または他の紹介等、必要な処置を決める。
9.家族を紹介した先の専門家に、アセスメントの結果と、考えられる治療計画を含めた処置について報告する。