ケース・フォーミュレーション (case formulation)

 日本語では事例定式化といいます。
 個々の事例の治療・介入の計画のガイドとして役に立つような、個人に特化した定式化を治療者が行うことです。
 定式化することには、

  • クライエント個々人の問題はなぜ生じたか
  • 問題はどのように変化しているのか
  • 問題が消失せずに続いているのはなぜか
  • 問題を改善するためにはどのような介入が必要か

 などがあります。

ケース・フォーミュレーションの目的

 ケース・フォーミュレーションはアセスメントで得られた情報を基にケースを理解し介入計画を立てるために行われます。様々な臨床心理学の理論を用いながら行われます。
 ケース・フォーミュレーションが行われない場合に生じうるリスクには、

  • 心理援助が援助者の勘や思いつきによって進められる
  • 特定のマニュアルに依存した介入に陥る

 などがあります。

ケース・フォーミュレーションの特徴

 精神医学的診断に否定的認識に基づいて発展しました。精神医学的診断の特徴には、症状の成り立ちや原因については考慮しない、症状を一般的な診断分類に自動的に位置付けて理解することを目指すなどがあります。診断システムの利点には、援助者間でケース認識を共有したり標準化された技法やマニュアルを適応さられることがあります。欠点には多元的な要因が絡み時間経過とともに変容する臨床ケースの理解においては有益ではないことがあります。
 ケース・フォーミュレーションの考え方で強調されるのは「個別化」と「仮説の生成・検証」です。
 個別化とは、クライエント一人ひとりの問題や状態を個別に捉えることです。オーダーメイドの介入計画作成を目指します。そのためケース・フォーミュレーションでは、個々のケースの情報を丹念に収集するアセスメントが重要となります。
 仮説の生成・検証では、問題に関する組み立て、その仮説の妥当性を援助の過程で確かめながら進める仮説検証を重視します。仮説の妥当性を確かめることは、クライエントの問題や状態が改善されているかを検討することです。仮にケース・フォーミュレーションに基づいた介入を行った結果、問題状況に改善がみられない場合、即座に更なるケース・フォーミュレーションを行い、より適切な仮説に作り直す必要があります。援助のプロセスを通じて、クライエントの変化を観察したり測定したり、常に仮説の正しさを検証しつつ援助が進められます。

ケース・フォーミュレーションのプロセス

第1段階:問題の明確化

 問題についてクライエントや関係者に語ってもらい情報収集します。
 現在問題になっていることについてクライエントに詳しく語ってもらいます。得られた情報から問題を特定化します。
 表現されたクライエントの訴えが具体的な事例や状態として示されるように質問を重ねます。クライエントが援助に何を求めているか明らかにします。

第2段階:仮説の探索

 問題の原因と維持について仮説を立てます。
 援助者は、クライエントから語られたさまざまな問題の香奈から対象とするべき問題を定めます。援助はすべての問題を網羅的に扱うのではなく、クライエントにとって重要な問題を見極めて焦点化する必要があります。その問題の発生要因と維持要因について仮説を立て、その仮説を裏付けるアセスメントを行います。認知面・行動面・生態面に渡って多元的にアセスメントを行い、仮説を検証するための更なるデータを収集します。

第3段階:フォーミュレーション

 問題全体と介入に関する仮説を確立します。クライエントと話し合い目標の再確認を行います。仮説の妥当性を検討し修正します。

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