アセスメント(assessment)

 心理査定、心理診断のことです。
 心理援助においては、診断的な心理学的検査よりも、広義の診断という意味で「臨床的アセスメント」という言葉が用いられます。
 一般的には患者について治療方針や処遇や援助の方針ための情報を収集する作業です。集める情報には、症状や問題行動、それと関連したパーソナリティや種々の環境要因などがあります。
 土居健郎は診断という言葉を用いないで「見立て」という言葉を用いることを勧めています。

アセスメントと診断の違い

 心理学的アセスメントと精神医学的診断は両者の間で共通する側面はあります。しかし、異なる機能を持つものとして位置づけることができます。
 人間の心理的特徴を幅広く測定・評価するという点で病理に限定される診断とは異ります。
 アセスメントと診断は、臨床心理学と精神医学との間の学問の有り方の違いと関連してきます。臨床心理学の有り方は、広い意味での心理学的問題の解決の援助を目的とします。一方で精神医学の有り方は病理である精神疾患を確定し、その治療を目的とします。

アセスメントの手続き

 心理学的アセスメントには様々な検査法があります。したがって、心理学的アセスメントでは、対象となる事例の状態に合わせて様々な方法を組み合わせます。多様な情報収集と多角的な分析が必要です。

心理学的アセスメントの諸段階

 心理的アセスメントは以下の段階を踏んで行われます。
①受付段階
 事例の基礎情報(状況、申込理由)を確認し、依頼者の申し込みを受け付けます。
②準備段階
 受付で得られた情報を基にアセスメントの計画案を練ります。
③情報収集段階
 面接、観察、検査の技法を用いて、必要な情報を得ます。
④情報処理段階
 情報の分析結果を総合して問題となっている事柄の意味を解釈し、作業仮説を生成します。
⑤結果報告段階
 作業仮説を必要に応じて依頼人、または当事者に伝えます。

アセスメントの諸技法

面接法

 会話を通して情報を得ます。大きく臨床面接法と、調査面接法に大別されます。
 臨床面接法は、心理援助のための面接法です。特徴は被面接者の話を中心にした非構造性です。面接者は被面接者の話を共感的に聴くことが重視されます。
 調査面接法は、情報収集のための面接です。面接者は調査目的にそった質問を系統的に行うので、構造的な面接となります。的確な情報を得ることが重視されます。

観察法

 行動をみることで情報を得ます。大きく、自然観察法、実験観察法、組織観察法に分けらます。
 自然観察法では日常場面を観察します。長所は状況を含めて対象の自然な状況を把握できることです。短所は多様な要因が介在するので、焦点が絞りにくいことです。
 実験観察法は、観察の目的に合わせて観察する状況に操作を加える方法です。観察場面の条件が対象に影響し、行動が不自然になりやすいのが欠点です。
 組織観察法は自然観察を効率的に行うために、観察の場面や時間を限定する方法です。観察内容とその基準を明確にして観察します。

検査法

 課題の遂行結果を情報とします。知能検査、人格検査、神経心理学検査などがあります。
 知能検査は知的機能を測定し、知能指数(IQ)を算出します。代表的なものとしてビネー式とウェクスラー式があります。
 人格検査には、質問紙法と投影法があります。質問紙法にはMMPI、TPI、Y-G検査、CMIなどがあります。簡便であるですが、被験者の意識を受けるという特徴があります。投影法にはロールシャッハテスト、TAT、風景構成法、箱庭、文章完成法、P-Fスタディ、描画テストなどがあります。無意識を含めて判定できるますが、検査者の熟練を要します。
 神経心理学検査には、ベントン視覚記銘検査、MRI、PETなどがあります。

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