客観的な根拠(エビデンス)に基づいて援助を行おうとする立場のことをいいます。
従来の臨床心理学には、個人的な勘や経験、各自が拠って立つ学派の考えのみに頼り過ぎているという批判やや社会的責任に対する疑問がありました。
それらの批判や疑問を乗り越えるためにエビデンス・ベースド・アプローチは発展していきました。
エビデンス・ベースド・アプローチの歴史と発展
根拠に基づく臨床心理学で最初に重視されのは介入法は本当に効くのか否かに関するエビデンスです。
歴史的にみると、1952年にH.J.アインゼクが「心理療法は逆効果である」と主張したことをきっかけに、心理療法の介入効果のエビデンスが注目されました。
1977年には、多数の心理療法に関する効果に関する研究を、M.スミスが統合的に検証しました。その結果、心理療法の有効性が高いことを数値として発表しました。スミスの複数の研究を統合的に検証する方法は、効果の判定方法として医学にも影響を与えました。
その後、臨床心理学においては「心理療法は効果があるのか」というテーマから「どのような心理療法がどの問題(疾患)に対して効果があるのか」というテーマに関心が移りました。そして一定の基準に基づいた介入法の効果研究が疾患ごとに実施されるようになりました。
エビデンス・ベースド・アプローチへの批判
エビデンス・ベースド・アプローチへの批判として以下のようなものがあります。
効果に関する研究がどこまで実際の臨床活動で有効かが不明
効果を確かめる際には環境や条件を調整した状態で調査・研究が行われます。それに伴い研究対象となる人は選別されます。
そのため複数の疾患を併発した対象者に効果に関する研究で得られた知見がどこまで適応できるか不明でした。
しかし、その後の研究によって、効果に関する研究がかなり一般化できることが確認されています。
効果に関する研究で示された効果の要因がどこにあるのか不明
これには対人関係における相互作用による促進を無視・軽視への批判も含まれています。
臨床心理活動を行い対象者が治る為には、心理療法だけではなく、援助者との対人関係がもたらす要因も考えなくてはなりません。
心理療法が効果をもたらしたのか、それとも援助者との対人関係が効果をもたらしたのか、あるいはまた他の要因が作用したのか判別するのは困難です。