高次脳機能障害の同定とその測定を目的として開発されたものです。
高次脳機能障害は外傷や疾患などによる脳の損傷によって生じます。おもには言語、認知、行為、読み書き、記憶、注意、前頭葉機能に障害を示すもの、および認知症があります。
検査の結果はこれらの高次機能障害を持つ患者の診断、診断計画、その効果の評価をする際に参照されます。しかし、臨床心理学的な問題が何らかの脳機能の低下を背景としている場合、脳損傷の有無(もしくは損傷の程度)に関わらず用いられることがあります。
各高次脳機能とその代表的な検査(見当識・知能)
脳損傷によって低下することがしばしばみられる見当識および知的状態についてスクリーニングします。見当識とは自分、場所、時間に対する理解のことです。また、スクリーニングとは簡単な検査を使って機能の低下があるかどうかを調べることです。
検査の種類
通常以下のいずれかが用いられる
- 改定長谷川式簡易知能評価スケール:HDS-R
- Mini-Mental State Examination: MMSE
機能低下が認められた場合
- ウェクスラー成人知能検査改定版:WAIS-R
非言語性検査(検査結果が言語能力に影響を受けない検査)
- レーヴン色彩マトリックス検査
- コース立方体組合せテスト
各高次脳機能とその代表的な検査(言語)
話す、聞く、読む、書く能力を検査します。
これらを包括的にするのに用いられる検査には、
- 標準失語症検査:SLTA
- WAB失語検査
があります。
また、理解能力の検査にはトークンテストがあります。
各高次脳機能とその代表的な検査(認知)
認知能力は、視覚、聴覚、触角のように感覚のモダリティごとに検査されます。研究が進んでいるのは視覚性認知です。
「標準高次視知覚検査:VPTA」が標準化された検査として使用できます。
各高次脳機能とその代表的な検査(行為)
標準高次動作性検査があります。
物品使用、ジェスチャー、模倣などの行為表出能力を検討します。○
また構成能力(描画・組合せ・組み立てといった行為にかかわる能力のこと)を検査することもあります。
さらに着衣・脱衣能力を検査する場合もあります。
各高次脳機能とその代表的な検査(記憶)
全般的な記憶能力を評価するための検査には、ウェクスラー記憶検査改訂版:WMS-Rがあります。この検査とともに、記銘力を測定する検査と以前に覚えたことを思い出す能力の検査も実施されます。
言語性の記銘力の評価には
- 三宅式記銘力検査
- 数字系列の数唱(聞いた順に答える順唱・逆順に答える逆唱)
があります。
非言語性(とくに視覚性)記銘力の評価には、
- ベントン視覚記銘検査
- Rey0osterriesthの複雑図形検査
- 自伝的記憶検査
- 必要に応じて「クロヴィッツテスト」や「社会的出来事検査」を追加して実施
- また、在宅への移行や復職が問題となる場合には「リヴァーミード行動記憶検査」を行う
- 抹消検査
- Audio-Motor Method: AMM
- ディジッドスパン(数唱)
- トレイルメイキングテスト:TMT
- Paced Auditory Serial Addition Task: PASAT
- ウィスコンシンカード分類テスト:WCST
- ストループテスト
- トレイルメイキングテスト:TMT
- 流暢性テスト
- ロンドン塔課題
- ハノイの塔課題
各高次脳機能とその代表的な検査(認知症)
とくにアルツハイマー型認知症における認知機能低下を調べる検査として、「アルツハイマー病評価スケール:ADAS」があり、よく用いられます。