恐怖症は、ほとんどの人々は特に危険だと考えないような刺激や状況への極度の恐怖です。
個人は、通常はこの恐怖は不合理だと自覚していますが、それでも不安を感じます。
強い不安からパニックに及ぶ場合もあります。
恐怖症の患者は、恐れている対象や状況を回避することによって緩和しようと試みます。
例えば、閉所恐怖症の人がエレベーターにあえて載らないなどです。
多くの人は、1つか2つでも何かに対して恐怖を持っているものです。
虫が怖い。高い所が怖い。狭い所が怖いなどです。
しかし、それがその人の日常生活をかなりの度合いで妨げない限りは、通常は恐怖症とは診断されません。
恐怖症の下位分類
恐怖症を単一恐怖、社会恐怖、広場恐怖の3つに分類されます。
単一恐怖 (Simple phobias)
単一恐怖は、特定の物体や動物や状況に対する恐怖です。虫、閉所、暗闇へのどうしょうもない恐怖がその例です。
単一恐怖が明らかになっても、恐怖対象に遭遇しなければ、正常である人もいます。
逆に深刻な場合では、個人の生活の多くの面に妨げになります。
例えば、「あまりに虫が怖いから、虫と遭遇する可能性がある外出ができない」などの例が考えられます。そのような場合は、強迫観念や強迫行動と絡み合っているのかもしれません。
社会恐怖 (Social phobias)
もしくは対人恐怖とよばれるものです。
人と一緒にいる場面で緊張したり、不安を感じることで相手に不快感を与えてしまっているのではなか、と心配する恐怖症です。
代表的な社会恐怖には
- 自己臭恐怖(相手が不快そうな顔をすると、自分の口臭・体臭が原因なのではないかと疑う)
- 赤面恐怖(緊張して赤面するのではないかと心配する)
- 醜形恐怖(容姿に自信が持てず、自分は醜いという思い込みから学校や会社に行けなくなってしまう)
- 視線恐怖(自分がいつでも人から見られているように感じてぎこちなくなったりする)
などがあります。
思春期に発症することが多く、人前で醜態をさらすことを極端に恥じます。
社会恐怖の人の多くは、自宅や見知らぬ人の中ではなく、多少知っている人との間で強い恐怖・緊張に襲われます。そして、社会的な場面に出ることを避けたり、不安が増大することで人間関係に支障をきたします。
広場恐怖 (agoraphobia)
広場恐怖の患者は、閉じ込められそうな場所や緊急事態が起きたときに助けを呼べなさそうな場所を恐れます。
この疾患にかかると、1人で外出できなくなったり、乗り物などに原因不明の恐怖を感じるようになります。
パニック障害の患者の多くが広場恐怖を発症します。
介入(治療法)
単一恐怖では心理療法が中心となります。
- 森田療法
- エクスポージャー法
- 系統的脱感作法
などが有効な手段です。
社会恐怖では、心理療法が中心となりますが、薬物療法も用いられることがあります。症状の背後にある心の葛藤を十分考慮した上で、ある程度長い時間をかけて治す心構えが必要です。