DSM-Ⅳ-TR

今日とりわけよく用いられている精神疾患の診断基準です。
『DSM』とは、日本語で言うと『精神障害の診断・統計マニュアル』という意味になります。『DSM-Ⅳ-TR』の『Ⅳ』は第4版で『TR』は改訂版を意味しています。つまり『DSM-Ⅳ-TR』とは『DSMの第4版の改訂版』という意味になります。

歴史と変遷

 DSM-Ⅳとは、アメリカ精神医学会(APA)の『精神障害の診断・統計マニュアル』の第4版です。DSM-Ⅰ(1952)、DSM-Ⅱ(1968)、DSM-Ⅲ(1980)、DSM-Ⅲ-R(1987)の刊行の後に、1994年に発表されました。現在ではDSM-Ⅳの改訂版であるDSM-Ⅳ-TRまで出版されています。
 米国では1970年代に精神医学を、実験や調査などで得られたデータに基づく研究と、実証的研究の上に再構築しようとする機運が高まりました。その結果、DSM-Ⅲで病因論(病気の原因を基に病気を分類する)をやめました。そして、操作的分類(観察された症状のまとまりに基づいて障害を定義し分類)が採用されました。
 現在では、脳科学や遺伝学が進歩してきていますが、これらは万能の存在ではありません。現状としては患者の言葉や行動を通して精神障害を判断していくしかありません。言葉、表情、行動などを記述・分類・解釈し、精神障害の診断基準を明確化し、障害の本質を理解しようとするのが精神病理学です。
 主要な精神疾患の身体的な原因が明らかになっていません。そのため、現在では、病気の原因は問わず、複数の症状のまとまりである症候群を基準とした分類(操作的分類)が優勢となっています。

多軸診断システム

 DSM-IV-TRでの最大の特徴は多軸診断システムです。
 多軸分類システムとは、複数の視点・基準から精神障害を診てゆく考え方です。
 DSMでは第4版であるDSM-Ⅳから採用されました。
 DSM-Ⅳでは、

  • 第Ⅰ軸
  • 第Ⅱ軸
  • 第Ⅲ軸
  • 第Ⅳ軸
  • 第Ⅴ軸

 の5つの分類があります。
 これらの多軸分類は、医療職、看護職、心理職、福祉職などの複数の専門家が連携し、協働(コラボレーション)して問題に対処する際の共通の枠組みとして利用されます。
 以下に記したものが、第Ⅰ軸から第Ⅴ軸の詳細です。

第Ⅰ軸

 臨床疾患、臨床的関与の対象となることのある状態(ただし、パーソナリティ障害および精神遅滞は除く)そのすべてが記録されます。

第Ⅱ軸

 パーソナリティ障害、精神遅滞が記述されます。

第Ⅲ軸

 精神疾患へ理解、または管理に関する可能性のある、現存の一般身体疾患が記述されます。
 例として、感染症および寄生虫疾患、神経系および感覚器の疾患などが挙げられます。

第Ⅳ軸

 心理社会的および環境的問題で、第Ⅰ軸、第Ⅱ軸の診断、治療、予後に影響することのあるものを記録します。
 不幸な出来事や環境的な困難、対人関係上のストレスなどの心理社会的ストレッサーの強さの程度を診断するものです。

第Ⅴ軸 

 機能全体の全体評定です。過去1年間の最高の適応状態を臨床心理士が判断し、0点から100点の間で点数をつけます。

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