生活周期や生活環、ライフスパンともよばれます。
人間が生まれてから死ぬまでの過程において経ていく様々な段階をいいます。
広く一般にこの言葉が浸透するようになったきっかけは、精神分析家で発達心理学者のE.H.エリクソンが、その著『ライフサイクル その完結』で取り上げてからです。
このライフサイクルを扱うのが生涯発達心理学です。生涯発達心理学は、誕生から死に至るまでの人間の一生涯を見通しながら発達を考えるものです。
エリクソンの生涯発達論
エリクソン以前の精神発達理論は、未熟なものが成熟へと向かう過程であり、成人することで発達を終えるというものでした。しかし、エリクソンはライフサイクルの観点から、人の生涯にわたる発達過程を提示しました。
エリクソンの考えた発達という言葉には、プラスの面だけでなくマイナスの面もあります。両者のダイナミックなバランス関係から危機が生じると考えたのです。そして、プラスがマイナスを上回ったときに人格的活力が生まれるとしました。
その発達過程は、心理社会的側面から以下の8の発達段階と各段階で拮抗し合う特性であらわされます。
乳児期
ここでの心理・社会的危機は「基本的信頼」対「基本的不信」です。この危機が乗り越えられた時、人は「希望」を獲得できます。危機を乗り越えるのに失敗した場合に「引きこもり」の傾向が現れます。
幼児期初期
ここでの心理・社会的危機は「自律性」対「恥、疑惑」です。この危機が乗り越えられた時、人は「意志」を獲得できます。危機を乗り越えるのに失敗した場合に「強迫」の傾向が現れます。
遊戯期
ここでの心理・社会的危機は「自主性」対「罪悪感」です。この危機が乗り越えられた時、人は「目的」を獲得できます。危機を乗り越えるのに失敗した場合に「制止」の傾向が現れます。
学童期
ここでの心理・社会的危機は「勤勉性」対「劣等性」です。この危機が乗り越えられた時、人は「適格」を獲得できます。危機を乗り越えるのに失敗した場合に「不活発」の傾向が現れます。
青年期
ここでの心理・社会的危機は「同一性」対「同一性の混乱」です。この危機が乗り越えられた時、人は「忠誠」を獲得できます。危機を乗り越えるのに失敗した場合に「役割拒否」の傾向が現れます。
前成人期
ここでの心理・社会的危機は「親密」対「孤立」です。この危機が乗り越えられた時、人は「愛」を獲得できます。危機を乗り越えるのに失敗した場合に「排他性」の傾向が現れます。
成人期
ここでの心理・社会的危機は「生殖性」対「停滞性」です。この危機が乗り越えられた時、人は「世話」を獲得できます。危機を乗り越えるのに失敗した場合に「拒否性」の傾向が現れます。
老年期
ここでの心理・社会的危機は「統合」対「絶望」です。この危機が乗り越えられた時、人は「英知」を獲得できます。危機を乗り越えるのに失敗した場合に「侮蔑」の傾向が現れます。
ハヴィガーストの発達課題
ハヴィガーストは、個人が健全な発達を遂げるために、発達のそれぞれの時期で果たさなければならない課題を設定しました。
彼の言う発達課題とは、人生のそれぞれの時期に生ずる課題です。それを達成すればその人は幸福になり、次の発達段階の課題の達成も容易になります。逆に、失敗した場合はその人は不幸になり、社会から承認されず、次の発達段階の課題を成し遂げるのも困難となる課題であるとされます。
各段階での課題については、
- 歩行の学習のような身体的成熟から生ずるもの
- 読みの学習や社会的に責任ある行動をとることの学習のような社会からの文化的要請により生ずるもの
- 職業の選択や準備、価値の尺度などのような個人の価値や希望から生ずるものなどからなっている
の3種類ありますが、多くの場合、3つのすべてが関係しています。