フランスの精神科医、発達心理学者です。
H.ワロンは、子供が最初から身体と対人関係の双方に規定されている存在であると主張しました。
彼は、情動の作用を通しての他との子供の関係を協調しました。
ワロンによると、姿勢機能は、子供の初期の成長にとって不可欠です。 それは、身体的な進展にだけでなく幼少の初めに心理的な的な進展にも関連があります。
また姿勢機能は情動や認識機能にも関連があります。姿勢は、パーソナリィの発達に最も重要な機能であるとワロンは考えました。
ワロンの理論とJ.ピアジェや対象関係論的な発達理論との違い
ワロンの理論では、子どもは身体と対人関係の双方に規定されている存在です。
しかし、J.ピアジェの理論では人間の思考や認知は、心身に特別な障害がない場合は感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期の順番で発達していきます。これはつまり、対人関係などなくとも心身が正常なら必ず子どもの思考・認知が発達することを意味しています。
こうしたピアジェとワロンの理論の違い巡る論争は『ピアジェ―ワロン論争』とよばれています。
また、ワロンの理論は対象関係論的な発達論と比較されることもあります。
対象関係論とは、対象関係こそが人格の発達に大きな影響を与えるとし、理論の中心にすえたものです。これは極論すれば乳児は対象関係(対人関係)さえあれば発達するという考えです。つまりワロンの理論からすれば、乳児の身体に関する観点が抜けていることを意味します。
姿勢機能 (fonction postrale)
姿勢機能は発達の初期にあって、身体の基礎的な特徴や機能と深く関わるものです。
姿勢機能は緊張によって形作られます。筋肉組織の緊張性機能によって姿勢機能は一定の水準を保てるのです。ただし、ワロンは緊張の概念について重要な役割を与えたにも関わらず、その後の生理学の発展をふまえて持説を再検討・展開していません。現在の小児医学の領域でも緊張の定義は一定してません。
ワロンが考えた姿勢機能には以下の5つの働きがあるとさます。
①運動を調整し確実にする働きや、姿勢を保持する働きをする。
②姿勢機能の初期の体制化は情動の体制化に等しい。原初的主観的意識に関わっている。
③表現の機能。自己と他者の同調を可能にする。
④外受容感覚の調整作用を行う。
⑤人格形成機能として模倣の発生から表象作用の獲得する。これは自己意識の獲得に関連している。
ワロンは、この緊張が元なって作られる姿勢機能が様々な情動(喜び・快感・怒り・苦悶など)を発達させると考えました。