E.シュプランガー (Eduard Spranger)

 ドイツの哲学者・心理学者です。
 心理学者としてはW.ディルタイの立場を継承した精神科学的心理学の代表的存在です。
 個人のパーソナリティを真、美、権力などの6つの価値観のいずれに向かっているかという観点から分類しました。
 また、青年心理学への貢献としては、了解心理学的な方法を駆使して1924に出された『青年の心理』があります。

6つの価値観

 シュプランガーが著書「生の諸形式」で説いたパーソナリィの分類です。
 人間が持ちうる価値観を6つに分類し、どのタイプの価値観を志向するかで個人を分類します。
 6つの価値観における個人のパーソナリティのタイプは以下の通りです。

経済志向型 (Economical intention type)

 経済性・実際性・効用性を重視し、物事を判断します。考え方は実際的で、利己主義的な性格と言えます。

理論志向型 (Theoretical intention type)

 合理的であることを重視し、物事を客観的に見ていきます。普遍的・客観的な事実を重視し、論理的な知識体系を探求することに価値観をおきます。

審美志向型 (Aesthetic appreciation intention type)

 美の調和と重視し、美しいものに最高の価値をおきます。繊細で敏感であり、芸術的活動に情熱を傾けます。

宗教志向型 (Religion intention type)

 宗教的、神秘的なことに興味と価値を置きます。特定の宗教へ関心があり、信仰している人に現れるタイプです。

権力志向型 (Power intention type)

 権力の獲得に強い関心を持ち、他人を支配しようとするタイプです。とにかく、人を支配し、命令します。

社会志向型 (Social intention type)

 他者との関係を重視し、協調していこうとすることに価値を置きます。仲間を愛し、同僚を大切にして、一緒に仲良く生きていこうというタイプです。

第2の誕生

 シュプランガーは青年期の全体的特徴を「第2の誕生」という言葉で捉えようとします。
 児童期の子どもは子どもなりに完成せいていて、安定した精神状態にあります。また同様に大人の場合も完成した精神状態にあります。
 しかし、青年期は子どもから大人へと変化していく時期です。精神状態や生活が新しいステップへと再編成されていきます。それ故に、青年期では心の均衡状態は突如として、あるいは徐々に掻き乱されいきます。青年期はきわめて深刻な動揺をもたらす発達段階であるとシュプランガーはみなしました。
 つまり、子どもの精神状態から、大人の精神状態へ生まれ変わるのに等しい状態にあるわけです。そのためシュプランガーは青年期を「第2の誕生」と呼びました。
 シュプランガーは「人間の一生の中で、青年期のように強く了解されたいと欲求しているときはない」と考えます。そこから青年心理学の第一の課題は、青年自身すら自覚していない青年の精神生活を意味深く探究することにあるとしました。
 青年期の精神状態での構造の変化をシュプランガーは「自我の発見」「生活設計の成立」「個々の生活領域への侵入」というの3つの観点から述べています。

自我の発見

 青年期に入る以前にも、自我体験がなかったわけではありません。ここでいう自我体験とは、「私はなぜ私なのか」、「私はどこから来たのだろう」というレベルの「私」への問いを指します。
 子どもの自我はあまりにも自明であって意識の対象とはなりません。つまり、自分は自分なのだからそれ以上考える必要がないわけです。
 しかし青年期では、自意識が自己の内面に反省的に意識が向かいます。それはつまり外界とは切り離された1つの世界を自己の内に見出すことを意味する。そこには途方もない孤独体験が伴います。

生活設計の成立

 この点では職業選択の問題が重要ですが、更に言えば問題はそれだけに尽きません。
 青年期になると、子ども時代に特有のその時々の興味や快感に促されて場当たり的に生きていくという態度を捨てていきます。そして、未来への展望の中に日々の生活を位置づけるようになっていくのです。
 そのような生活全般に対する新しい態度の成立が、生活設計の成立です。

個々の生活領域への進入

 子どもでも既に成人の世界のさまざまな価値領域を理解しています。しかし、それは理解しているだけであって、その価値観に従って生きているわけではありません。

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