L.S.ホリングワースはアメリカの心理学者です。心理的離乳という概念を提唱しました。
心理的離乳とは青年期においての用語です。青年期になり、それまでの両親への依存から離脱し、一人前の人間としての自我を確立しようとする心の動きのことです。
第2反抗期とも言われ、親との葛藤・親への反抗といった強い分離不安を伴うもので、精神的に不安定になりやすいです。
甘えの雰囲気の強い家庭では、様々な家族問題を引き起こしたりしかし。しかし、同じ苦悩を共有する友人との相互依存関係を通して、漸次的に克服されていきます。
心理的離乳
L.S.ホリングワースはその著書『青年心理学』の中で、はじめて心理的離乳という語を使いました。彼は青年期の家族から自立を示す語としてこの言葉を用いました。
乳児期から幼児期への大きな変化の1つに離乳がある。これは子どもにとって母親との身体的繋がりを断たれることを意味する。
同様に、児童期から思春期・青年期となるに従い、青年は親の管理や指導から解放されることを望みます。つまり、家族からの独立を試みるのです。
青年は自らの内的欲求に従って独立を試みます。しかしその一方で、いまだ心理的には未熟です。それゆえ親離れは青年の不安をかき立て、情緒的な混乱を引き起こします。しかし、この危機を乗り越えないで青年が親に依存しつづけると、成人として一人前になることが難しくなります。心理的離乳は独立のプロセスなのです。
その際、子どもはそれまで家族との間に形成され、適応されてきた習慣を変え、家族との関係のあり方を修正します。それは同時に親の側へ子どもへの対応のあり方の修正を迫るものです。
幼児期から児童期にかけて親は子どもをしつけはじめ、子どもにさまざまな要求を課していく。子どもが両親から受容され、子ども自身の価値を親が認めていると、心理的離乳は、青年期の発達段階に応じて様相が変化し、親子それぞれに危機をもたらします。
しかし、親子が危機と向き合い、乗り越えようとすることは、互いが理解を深めることに繋がります。親子が支え合っていることを認識し、受容していく過程が心理的離乳なのです。そしてそれは、人間が青年期以降も生涯にわたって抱え続けていく親子関係をめぐる課題といえるでしょう。
また、心理的離乳に類似する概念として、オースベルの脱衛星化があります。
一次~三次的心理的離乳
西平直喜は、第一次心理的離乳と、第二次心理的離乳があるとしている。
第一次心理的離乳は思春期から青年中期において現れます。第一次心理的離乳は親への依存の払拭に重点をおくもので、子どもが親の絆を壊そうとするものである。
第二次心理的離乳は青年中期から青年後期に現れる。これは後者は第一次心理的離乳後に育ってくる自律性に重点がおかれるものです。親子関係を客観的にみつめ、関係を自覚的に修復し、親の絆を再生し、強めていくものです。
さらに西平は、第三次心理的離乳の存在も指摘しています。これは人間が自己実現を果たすためには、両親から与えられ内面化された価値観やモラルを超越し、自分らしい生き方を確立するという課題です。