乳幼児精神医学の第1人者です。
実証的な研究(母子の交流を録画して細かく分析するミクロ分析など)をとおして、乳児の心的世界を解明しました。
また、「精神分析の発達理論として描かれた乳児」と「発達心理学者が実際の観察をもとに描く乳児」とを統合しました。そして、そこから乳児の主観的世界を「自己感」の発達として見直しました。
自己感
乳児の自己感には4種あります。それぞれ異なった時期に現れ始めるますが、一生を通じて発達し続けるといいます。
萌芽的自己感(0~2カ月)
自己を含む世界についての感覚であり、母親との交流を積極的にするという目的を持って作用している。
中核的自己感(2~3カ月頃)
一つの自己としての経験がもて、身体自己として経験し、それには独特な情動の経験が伴う。
主観的自己感(7カ月頃)
自己と他者は身体的存在としての核単位としてだけではなく、感情、動機、意図という主観的精神状態を持つ存在として経験される。
言語的自己感(18カ月頃)
言語発達に伴って、自他相互の共同作業によって経験が想像される。伝統的精神分析での対象となり、処理されてきたのはこの言語的自己感の領域である。
情動調律
スターンによると、母親との関わり合いで重要な役割を果たすのが情動調律です。
情動調律は、主観的自己感の形成期で初めて観察される母子間の情動的な相互交流のパターンです。
情動調律とは、親が乳児との感情共鳴の体験を自動的に他の表現型で表し、乳児とは別のパターンや行動の背後にある乳児の内的感情を反映するような行動の側面をまねることをいいます。
情動調律は身ぶりや声の抑揚を通しての交流です。
たとえば、乳児がおもちゃに興奮して「アー!」という喜びの声をあげ、母親の方を見みたとします。母親もその子の目を見返し、上半身を大きく揺ってみせる。その動きは子どもが「アー!」と言っている間続いたとしたら、親は子どもと同じ喜びと興奮に満ちているといえます。これが情動調律です。