エルンスト・マッハは、当時オーストリア領であったモラヴィアのキルリッツ(現チェコ領)に生まれました。専門は物理学や数学でしたが、関心領域は哲学、科学史、心理学、生理学、音楽学にも及びました。
マッハの影響は現在もなお残っており、超音速の速度単位のマッハ数や、心理学のマッハ効果は彼の名前に由来します。
要素一元論
要素一元論とは、マッハの哲学の中心的な主張をいいます。要素一元論では、デカルトが唱えたような心身二元論や、主客二元論は否定されます。
マッハによれば、世界は感性的諸要素から成り立っています。感性的諸要素とは、色、熱、音、圧力など感覚器官で捉えられるものをいいます。世界について人間が知りうることは、必ず感覚器官を通して知覚されます。つまりマッハは、それまで単なる現象として軽視されてきた感性の世界こそ究極の実在としたのです。
統一科学の構想
要素一元論を唱えたマッハは、更に、因果関係とは感覚的諸要素の関数関係として表現できるとしました。そして、科学の目標は感覚諸要素の関数的関係を、最小の思考の出費で事実をできるだけ完全に記述することなのだと主張しました。
この考え方では、感覚で掴めないものは先験的に認めて命題に織り込むようなことは認めません。よって、実証主義の中でも極端なものといえます。
マッハのこの論点に立つと、物理学と心理学との違いは、研究対象の違いではないということになります。むしろ、この二つの学問の違いは、記述を作り出す観点が異なっているにすぎないのです。
これらを踏まえて、マッハは統一科学というものを構想しました。