器官劣等性とは、A.アドラーが提唱した概念です。幼児の生活に困難をもたらすような身体的なハンディキャップを意味します。
器官劣等性の影響
全ての人間は、他の人間と対等に感じたい欲動をもって生まれます。人間は劣等という位置から出発します。そして、無意識に「マイナスに感じる」境遇から離れて「プラスに感じる」境遇に向かおうとするのです。
例えば、視力の弱い人が見るという行為に対して関心を持ち、自らの弱点を克服しようとするなどがこれにあたります。このような自らの弱点を克服しようとする心理的な働きをアドラーは補償と呼びました。
あるいは器官劣等性に注意を払いすぎて補償の仕方を誤ると劣等コンプレックスに陥る場合もあります。
「器官劣等性の研究」(1907年出版)
アドラーは自身の著作の研究で以下のことを論じました。
先天的な器官劣等性が軽いものでも、劣等性の日々の生活への影響や共同体への不適合により、主観によって大きなものとなりえます。
もし子供が器官劣等性のせいで適応できないと思うと劣等感が生じ、自分は人より価値がないと思いこみます。
器官劣等性を感じている子どもは慎重な扱いを要します。もし大人が不器用さ、ひ弱さ、のろさを批判すると、すでに存在している劣等感に過度な負担をかけてしまいます。そのため、自己の価値は叱られて吹き飛び、自分の必要のために他人を当てにする者となるのです。そして、自尊心は低くなり、神経症への道へ至ります。
しかし、もし勇気づけられたなら、劣等感に対処する活力と勇敢さをのばします。このような子どもは問題に真正面から向かえるようになります。そして、器官劣等性がもたらす困難を好機とみなすのです。
補償の過程はよく考えなければなりません。もし補償をしなければ神経症が起きてきます。
過補償は優れていると目される、劣等感を指摘されるかもしれないという恐れに対する防衛です。過補償の人は適切に振舞おうとするだけでなく、優れていると目される人と同等になろうとします。その子どもは懸命に励み、その結果、過補償となります。