優越コンプレックス (superiority complex)

 優越コンプレックスとは、A.アドラーによる定義した、劣等コンプレックスの一種です。
 自分が優れた人間であるかのように見せかけることで劣等感に対処する態度をいいます。劣等コンプレックスの強い人は、それを過剰に埋め合わせしようとして虚栄心に満ちた態度をとることがあるのです。

優越コンプレックスが生じる仕組み

 優越コンプレックスは、個人が自らの劣等感から抜け出そうとして生じます。優越コンプレックスを持つ人は、それを発見されまいとして様々な抵抗によって劣等感を否定します。
 患者が優越コンプレックスか劣等コンプレックスを持つ場合、アドラーは患者の行動に隠されたもう一方のコンプレックスを見つけられると考えました。またアドラーは精神的な疾患において誇張された劣等感があるとも考えていました。
 劣等コンプレックスは自分を特別に扱って欲しいと思う個人が抱えるものです。逆に優越コンプレックスは自分を侮られたくないと思う個人が取る態度です。その意味では、劣等コンプレックスと優越コンプレックスは表裏一体の態度といえます。
 アドラーによれば、課題に直面した個人はそれを克服したいと考えます。タスクに直面したとき個人は劣等感または現在の状況が好ましいか否かという感覚を経験します。もしも個人がきちんと訓練されていない場合、課題の克服が困難に感じ、劣等感の増長や激しい不安につながるかもしれません。その個人は課題に挑んだとしても、いくつかの失敗の後に克服を諦めて劣等コンプレックスや抑うつ感を経験します。あるいは、どのような犠牲を払ってでも課題から背を背けようとするかもしれません。彼らは自らの優越性を維持するためならば他者や属するグループを攻撃するかもしれません。

アドラーが重視したもの

 アドラーは自我の機能の健康さを重視しました。
 個人の中の無力感と自尊心の欠如は、心理的であると同時に社会的にも働きます。それが他者との関係で補償されて社会化されると優越感が達成されます。こうして育った社会感覚は社会参加を促します。そして、その個人の課題の実現を助けると考えられます。
 これらを実現するには、個人の心理治療だけではなくグループへの介入・激励・短期の支援が必要です。

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