アドラー心理学とは、個人心理学とも呼ばれます。
オーストリアの精神科医A.アドラーが創始した心理学の理論体系や、治療技法の総称です。
アドラーは、彼の心理学の理論を発展させるにあたって、S.フロイトの精神分析学の一派から抜け出しました。
現代心理学諸潮流の理論的先駆けといわれ、社会精神医学、人間学的心理学に大きな影響を与えました。
アドラーの方法論は全体論としてのアプローチを含んでおり、これは20世紀後半のカウンセリングと精神分析学的な方策に大きな影響を与えました。
アドラー心理学の別名は「個人心理学」ですが、アドラーの理論では特定の個人だけを取り上げるものではありません。アドラーは患者を診る際には他の人々を含む全ての環境を考慮しなければならないとしました。
「個人」という言葉は、患者が分割できない全体であるという意味として使われます。
アドラー心理学の特徴を知る三つの視点
アドラー心理学の特徴を知るには、
- 理論的特徴
- 思想的特徴
- 治療技法
を見ていく方法があります。
理論的特徴
理論的特徴には、以下の4つがあります。
全体論
人間の心は部分には分割できないという考え方です。つまり、人間は全部まとめて一つであり、理性と感性、意識と無意識は対立しているのではないと考えます。
目的論
置かれた状況についての過去の原因を分析するよりも、現状からどうしたいかという未来の目的を重視することを目的論といいます。
認知論
物事に対する客観的な事実より、事実への個人の主観的な認知を重視します。
これは容量の半分に水が入ったコップを「半分しか入っていない」と取るか、「半分も入っている」と取るか、という例えが挙げられます。
個人心理学で重視されるのは主観や価値です。
ただし、この考え方は科学的でないという批判もあります。
対人関係論
アドラー心理学では、無意識などの精神内界はあまり考慮しません。それよりも、個人と相手の対人関係を重視します。
思想的特徴
思想的特徴には、以下の2つが挙げられます。
他人を支配しない
自分の人生は自分のもの、他人の人生は他人のものと考えます。
他者に興味を持って他人を援助する
人は一人では生きていけません。相手は何が不足しているかを考え、自分が出来る範囲で相手の欠けている部分を補うことを心がけます。
治療技法
治療技法の特徴は以下の3つです。
目標の一致
実現可能な治療目的の一致をとります。
解釈と推量
クライエントのいうことを主として治療の目的について推量します。それをクライエントに確認をとります。つまり医者とクライエントは対等な立場なのです。「医者のいうことが最優先」という権威主義に走りません。
課題の分離
治療に際し、どのような課題があるのか明らかにします。
クライエントが責任を持つべき課題と、責任がなく介入する権利がないものを区別します。
代替案の提示
目標達成の方法は一つではなく、様々なアイデアをクライエントに提供する場合もあります。