個性化過程 (individuation process)

 C.G.ユングの心理学を理解するための概念です。
 ユング心理学では、個性化過程とは個々の人間が未分化な無意識を発達させるプロセスをいいます。個性化過程では人格の本来の要素や精神的に未熟な要素、あるいは人生における経験が、時間と通して一つのものへと統合していきます。つまり、人間が心理的に独立した、それ以上分割することのできない単位となる過程です。広い意味で、個人が自分自身というかけがえのない個別存在となっていくプロセスとなります。

『タイプ論』での定義

 個性化過程の目標は個体としての人格発達にあること、個体としての発達は集合的関係を前提としています。
 個性化は、孤立化とは異なります。また、自我を中心とした意識化のプロセスとは異なります。個性化とは、自己愛的に他者や世界に背を向けることではありません。さらに、無意識の動きに目を閉じることでもありません。
 逆説的ですが、個性化過程はその展開に他者を必要とします。その過程が展開する人為的な器として分析関係や心理臨床面接の関係があります。あるいは、自我の姿勢によって日常の人間関係もその自然な器として機能する可能性もあります。
 個性化の方向は、ある程度その時代の集合的な規範と対立することがあることを指摘しています。

元型と個性化過程

 ユングのコンプレックスの理論に加えて、個性化過程の理論は以下のものによって成り立ちます。

  • 神話のイメージ
  • 外向と内向といった一般的なタイプ論
  • 夢の補償

 個性化過程の象徴として、元型である影や老賢者、あるいはアニマやアニムスがあります。
 個性化過程はペルソナから始まり、第2の段階ではアニマやアニムス、第3の段階として影、そして老賢者などを経て、最終的には自己へと至ります。

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