トリックスター (trickster)

 C.G.ユングが提唱した元型の一つです。
 神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を引っかき回すいたずら好きとして描かれる人物を指します。
 文学などでトリックスターは、しばしばステレオタイプなキャラクターとして登場します。物語の中においてトリックスターは、その物語を進行させる役目を負います。トリックスターの行動は、他の登場人物を当惑させたりします。
 民間伝承においてトリックスターは、賢いいたずら者としてトリッキーな行動をとります。トリックスターは道化師のように面白い登場人物として知られます。
 例えば、おとぎ話に登場する王様は、自分の娘に見合った花婿か確かめるために、花婿候補に試練を課したとします。この手の物語においては、騎士や王子のような高貴な人物では試練を達成できず、むしろ貧乏な百姓などの最も軽んじられていた候補により試練が達成されたりします。この場合、試練を達成するためにはそれまで騎士や王子が失敗した方法を取ることになります。そして、最も軽んじられていた花婿候補は試練を達成するのです。こうした人物や、あるいはその協力者がトリックスターです。

トリックスターとされるもの

  • 北アメリカ―インディアンのウィネバゴ族の物語
  • ギリシャ神話のヘルメス
  • 北欧神話のロキ
  • 日本神話のスサノヲ
  • アマテラスを天岩戸から導き出したアメノウズメもまた、トリックスター的な要素をもっている

トリックスターの特徴

 破壊的で道徳に反する行為を行ったりします。そのために古い秩序が壊されますが、これは否定的にも肯定的にも働きます。
 トリックスターは、トラブルメーカーとなって収集できない混乱をひきおこすこともあれば、破壊がきっかけとなり新たな建設や創造がなされることもあります。
 トリックスターはいつも「2つの世界」をつなぐものです。思いがけない結びつきや新たな可能性を引き出す英雄であるとともに、混沌の火種となる困り者でもあります。

現代におけるトリックスター

 トリックスターは、「笑い」とも深い関係を持ちます。神話を生きられなくなった時代には、「道化」がトリックスターの代わりを担うようになったといえます。
 現代においても、トリックスターはさまざまな局面で顔を出します。学校へ行かず家庭内暴力を起こしているクライエントや、クラスの中の問題児、会社における要注意人物などがその例と言えます。
 しかし、現代のトリックスターたちは暗く、受け入れがたい側面を示す場合が多いです。けれど、その内には家庭、学校、会社を変えうる創造力をも秘めています。そこでは破壊性と創造性の両者が生きています。

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