個人的無意識 (Individual Unconscious)

 C.G.ユングによって提唱された概念です。
 個々の人間に固有な無意識で、集合的無意識の対語となります。
 個人的無意識の機能には、個人の自我を種々の不快な記憶や苦痛な刺激となる欲求から防衛するなどがあります。

個人的無意識に包含されているもの

 個人的無意識は、一度意識されながら、忘れ去られたり抑圧されたために意識から消え去った内容から成り立っています。つまり、個人が生れて以来、経験し、考え、感じたもののなかで、現在意識されていないものすべてが包含されています。それらは、忘却されたか、意識によって回避(抑圧)されたか、もともと意識化で知覚され、考え、感じられたものとされています。
 個人的無意識が抑圧しているものには、

  • 個人の人生の過程と関連した不快な記憶や情動
  • 感情を混乱させる幼児期の外傷体験
  • 原始的な本能

 などがあります。

個人的無意識とフロイトの理論

 ユング心理学において、個人的無意思は集合的無意識やフロイトの無意識の理論と深い関わりを持っています。
 しばしば個人的無意識は、外界や空間的な世界と内界や精神的な世界の緩衝地帯に位置しているとされます。意識が単に目に見える外界しか捉えられないのと反対に、無意識は遥かな広がりを見せます。
 個人的無意識は意識できない様々なものを含みつつ存在します。個人的無意識は、一度意識に上ったものの消え去ったり、忘却したしたり、あるいは抑圧されたもので成り立っています。個人的無意識は、何らかの理由で抑圧されていた記憶が比較的簡単に思い出せるという点で、ほとんどの人はこれが無意識であると理解しています。そのため、ユングの個人的無意識の理論は、フロイトによって提唱された人間の心には忘却、無視、抑圧された領域があるという無意識の理論とほとんど同じものです。
 しかし、ユングは個人的無意識とは層をなす無意識の表層であるに過ぎないと提唱しました。個人的無意識を含んだものをユングは、心的複合体(コンプレックス)と呼びました。その上で、それらコンプレックスは、個性や精神的活動を構成するとしました。そして、個人的無意識の更に奥深くには人類に普遍的に共通する集合的無意識があるとユングは提唱しましたが、フロイトは集合的無意識の存在を認めませんでした。

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