集合的無意識とは、C.G.ユングが定義した概念です。普遍的無意識ともいいます。
集合的無意識は個人的無意識より深い層で、人間に生得的に備わっている心の奥底にある無意識をいいます。
S.フロイトは、心は意識と無意識からなると考えました。ユングは更に、無意識を個人的無意識と集合的無意識の階層構造に区別しました。
集合的無意識の存在は、無意識を個人的無意識に限定したフロイトとのユングの大きな違いであり、ユング心理学の大きな特徴の1つといえます。
集合的無意識の特徴
集合的無意識は、個人的に獲得された無意識とは違い、生まれながら人間に備わっているもので、人類一般に普遍的なものとなります。人類一般に共通のものにいたるまでには、ある家族に特徴的な家族的無意識や、ある文化圏に共通に存在する文化的無意識などを考えることもできます。
集合的無意識は、人類に共通した形式と内容を有するため、そこでのイメージは経験的な日常生活での具体的事物とは独立に自律的に働きます。例えば、自然に安らぎを感じたり、昇ってくる朝日に神々しさを感じるのは誰かに教えられて抱く感情ではありません。これらは人類に共通することといえるのです。
集合的無意識があるからこそ、自分自身とも他者と対話し、理解し合えるのだともいえます。ユングは、私たち一人ひとりの人生は、普遍的なものの根や地下茎から生えたひと夏限りの植物に過ぎないとさえ言いました。言葉を変えれば、「自分は自分である」という自己意識や、思うこと、感じることなどは、すべての人類の長い歴史や文化から無縁ではありません。
また、精神病の患者が、自らを取り巻く外的な状況に対して重篤な症状を出している場合は、集合的無意識が働いていたりします。
集合的無意識と元型
ユングは時間的、地域的につながりのない土地の神話や昔話、夢、宗教説話、さらには精神病患者の幻覚や妄想の中の共通のモチーフを見出しました。そして、集合的無意識の内容は《元型》によって形作られていると考えました。
それらは夢や外界への投影といった形で象徴として把握されるとされます。