永遠の少女 (puella aeterna)

 永遠の少女についての研究は、まだ手がつけられたばかりであり、若干の混乱がみられます。
 永遠の少女についての見解は大きく分けて2つあります。
 1つはフォン・フランツの永遠の少年を、そのまま女性に置き換えたものです。永遠の少年と同様に大人になることを拒否しているような女性、例えば思春期やせ症(摂食異常)のようなものを指す場合もあります。
 もう1つは、L.S.レナードが述べた考え方です。女性が父―娘関係において傷つき、自らの置かれている状況に絶望した時、「永遠の少女―武装せるアマゾーン」の元型が現れるというのです。
「永遠の少女」とは、実年齢にかかわらず、心理的には少女のままで根本的に何かに依存している状態です。この元型に支配された女性は、他人の期待する役割を演じるだけで、自分自身の生き方をしていない状態です。
 逆に、「武装せるアマゾーン」は「永遠の少女」とは対極にある元型です。父親に対する反動のために、女性的に振舞うのをやめ、男性的に振舞っている状態です。「武装せるアマゾーン」という元型は、心の痛手や自分自身の弱さを守るための心理的な鎧である場合が少なくありません。その鎧は職業的能力を発達させたり、仕事の世界で立場を得るには肯定的に女性を守ります。しかし、この鎧のせいで女性的感情や温和な側面を排除させる場合、創造的な男性との健康な関係などから女性を疎外しがちです。

永遠の少女

 レナードは「永遠の少女」という元型について、そのあり方から以下の4タイプに分類しています。

可愛い人形

「永遠の少女」に多いタイプです。このタイプの女性は恋人の期待通りのイメージになり、恋人が女性に抱く幻想を取り入れていきます。表面的には安定を得て成功を収めた女性に見える場合が多く、他の女性からは羨望の的となる場合が多いです。しかし、内面的には絶えず他者のためにポーズをとっているので自分が本当は何者なのかわからず、精神状態は脆く不安定です。

ガラスの少女

 引っ込み思案でか弱く、外の世界から逃避して空想の世界に生きている状態です。外の世界から逃避する生き方には書物の世界への逃避があります。特に詩やファンタジーの書物の世界へと逃避する生き方をします。

飛んでる女―女ドン・ファン

 このタイプは衝動的に振舞い、可能性の中で生きています。のびのびと自由で気ままで刺激的に暮し、そのときの気分で出来事に身を任せて生きています。
 しかし、このような生き方は同時に儚いものでもあります。このタイプの女性の生き方は方向性がなく、偶然に身をゆだねています。

はぐれものの女

 父親に抱く感情によって、社会から拒絶されたり、社会に反抗する生き方をしているタイプです。このタイプの女性は、男性と一体化しており、肯定的に父親に愛着を持っています。そのため、社会が父親を拒絶すれば彼女は社会を拒絶するということにもなりかねません。

武装せるアマゾーン

 レナードは更に「武装せるアマゾーン」という元型も、そのあり方から以下の4つのタイプに分類しています。

スーパースター

 無責任な父親への反発として最も多いタイプです。仕事や事業の領域において父親の行わなかったことをします。過度に仕事をしたり、業績をあげることが多くなり仕事中毒に繋がることが少なくありません。
 このタイプの女性は、潤いがなくなったり、感情や直感の源泉から切り離されてしまいます。そのため抑うつ的になったり、生きがいの喪失に悩まされることが珍しくありません。

律義な娘

 自分の役割や仕事を律義に遂行しようとするタイプです。このタイプの女性に課せられた課題は、自らが背負っている義務感は、他者が自らに投げかけたイメージによって形成され、本来は自分のものでないと気付くことです。律義な娘のイメージによって善良や美徳と称えられても、自分が本当にやりたいことを抑圧されているということを自覚する必要があります。

殉教者

 過度の自己犠牲を自らに強いるタイプです。殉教者的な生き方の主な特徴は妻として、もしくは母として、あるいはその両方として勤勉な召使いになることです。この生き方では自らを弱者として扱い、強者に対して憎悪や復讐心を鬱積させることになります。

戦士の女王

 無責任で弱い父親に対する反発として、強力で決然とした闘士のような生き方をするタイプです。父親が堕落した形で実現した、あらん限りの非合理的なものに対し反発します。

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