アナクサゴラス

 アナクサゴラスは万物の根源であるアルケーについて多元論を唱えた自然科学者です。イオニアの植民都市クラゾメナイで生まれで、後にアテナイに移住しました。
 アナクサゴラスはアナクシメネスの弟子でもあった人物です。
 彼は万物の根源であるアルケーは、無限に小さなスペルマタであると説きました。
 また、彼は「太陽は灼熱した石」「月は光を反射して輝いている」など、独自の説を唱えて、不敬罪に問われたこともあります。

スペルマタ

 アナクサゴラスは、空気をアルケーとみなした師の発想を踏まえて理論を発展させました。
 この世界にはありとあらゆる多様なアルケーが無数に存在していて、それらはとりだすことのできないくらいに無限にも微小なものなのだと彼は想定したのです。そして、その数がエンペドクレスの考えたように四つに限定される必然性はないと考えました。
 アナクサゴラスは、このようなアルケーが、いわば種子(スペルマタ)というかたちで、万物の源をなしていると考えました。
 スペルマタは、目に見えないほど小さく、同種のスペルマタが一定量以上集まると、私たち人間にも知覚できるようなると説きました。

ヌース

 原初の世界では、無数のスペルマタが混沌とした状態で存在します。そんな状態のスペルマタに秩序をもたらし、生成を促すよう作用する力をアナクサゴラスはヌースと呼びました。
 アナクサゴラスの説によれば、スペルマタの結合と分離は、それ自体の力で起こるのではありません。宇宙の旋回運動によって起こるのです。そして、その運動を支配しているのがヌースなのです。

アナクサゴラスの説とゼノンのパラドクス

 アナクサゴラスの説に従えば、感覚世界に現れる生成や変化や消滅は、根本の存在であるスペルマタ自体の変化や消滅ではないことになります。
 万物が無限の微粒子であるアルケーから作られているとすれば、当然それは無限に分割できる、ということになります。よって、アナクサゴラスの説は、ゼノンのパラドクスへの抵触を回避できるのです。

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