アンリ・ベルクソン

 アンリ・ベルクソンは、フランスの哲学者です。「イマージュ」や「エラン・ヴィタール」という概念を唱えたことで知られています。
 彼の思想は、第二次世界後長くにわたり評価されませんでしたが、メルロ=ポンティに影響を与えており、ドゥルーズによって復権されました。
 ベルクソンの著作には『時間と自由』『物質と記憶』『創造的進化』などがあります。

イマージュ

 ベルクソンは、心と物をセットで扱ったイマージュという実存概念を唱えました。彼はこれによりデカルト以来の心身問題を解決しようとしたのです。
 デカルトは心身二元論により、物体を空間的な拡がりであって、心や思考と区別しました。しかし、ベルクソンはこのように物体と心は明確に分断できないとしました。
 例えば、暗い夜道で向かいから明るい光が猛スピードで突進してきたとします。この場合、例え光しか認識できなくても「自動車が突っ込んでくる」と判断して横に逃げるはずです。つまり、自動車という物体の輪郭とは無関係に、危険であると想像して避けるという判断を下しているのです。
 このような確定した輪郭を持たない対象と、それに対する人間の反応のセットがイマージュなのです。
 ベルクソンは、時々刻々と変化するイマージュこそが実在であるとしました。上記の例の場合、光を避けるという反応は、避けないと怪我をするという学習の記憶を元に行われます。ベルクソンはイマージュという概念を用いて、一旦は心と物質を等しい次元に引き戻した上で、人間の心は記憶を持つがゆえにその他の物体とは異なるとしました。

エラン・ヴィタール

 エラン・ヴィタールとは生命の跳躍とも呼ばれます。
 ベルクソンは進化論についても述べており、各生命体には、その種を進化させる内に秘めたエネルギーであるエラン・ヴィタールが存在するとしました。
 イマージュという概念を想定するベルクソンにとって、自分自身という存在はその都度、目の前の状況と過去の記憶によって形作られる行為の場でしかありませんでした。その上で、生命の自由は、目の前の問題に過去の記憶が役立たないときに、これまでなかった解決策を生み出すエラン・ヴィタールという形を取るとしました。

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