臨床心理士の職域

 臨床心理士は以下のような領域で活動しています。

  • 教育領域
  • 医療・保健領域
  • 福祉領域
  • 司法・矯正領域
  • 産業領域
  • 開業領域

 いずれの領域でも他の職種や利用者との連携が重要となります。それを実現するには、各職域の現場の特徴を知り活動する必要があります。
 専門職としてサービスを提供するには、「どのような(What)」だけではなく、「どのように(How)」についても配慮しなければなりません。

臨床心理士に求められる社会的専門性

 社会的連携は臨床心理士にとって必須の活動です。社会的連携は、臨床心理士の仕事の中の「地域援助」という活動に関わってきます。
 臨床心理士が業務を行う対象には以下の人々がいます。

  • 臨床心理的な援助の利用者
  • 利用者の家族や周囲の人々
  • 利用者の援助にかかわる他の職種の専門家

 臨床心理士が活動する場合、面接やアセスメントなどは臨床心理士が一方的に行うものになってはいけません。臨床心理的な援助に関わる人々との相互の協力の中で、より妥当なものになったり、利用者にとってよりよいものになる必要があります。

社会的連携のかたち

社会的連携には様々な形があります。臨床心理士は専門性を活かして社会的連携に貢献することが期待されています。
 臨床心理士が他業種と協力して活動する場合、以下のような業務があると考えられます。

利用者―スタッフ間のコミュニケーションの支援

 コミュニケーションの技能の活用が期待されます。
 利用者と他の職種のスタッフとの間のコミュニケーションが円滑に行われるように支援します。

スタッフのメンタルヘルス・ケア

 燃え尽き症候群の予防や対応の技能を使用します。
 これにより、スタッフのメンタルヘルス・ケアに貢献します。

チームワークの推進役

 事例や組織のマネジメントに関して、心理学的な見方や知識を駆使して意見を提示します。

他の専門職への心理的知識・技能の教育

 他の専門職が臨床現場で体験する問題に関して行います。
 心理学の知識を使いその問題を理解し、対応するためのコンサルテーションを行います。

利用者のニーズ調査、サービスの評価

 心理学研究法を用いて行います。利用者のニーズや援助の成果を客観的に評価します。

臨床心理士が活躍する領域

 臨床心理士が活躍する領域は大きく分けると、教育領域、福祉領域、司法・矯正領域、産業領域、開業領域の6つになります。

教育領域

 教育領域とは、主に学校などの教育機関のことをいいます。学校では、いろいろな事情で登校が難しかったり集団行動に困難のある生徒やその保護者の心理相談に応じます。

医療・保健領域

 医療・保健領域で働く臨床心理士の勤め先としては、病院、保健所、リハビリテーション施設などが挙げられます。

福祉領域

 子育て支援の場では、発達の相談や子育ての相談に携わります。
 その他、虐待やDV被害を克服するための相談、障害を持った子どもや大人の療育・相談や支援にもあたります。

司法・矯正領域

 家庭裁判所では少年事件や家事事件(離婚訴訟等)に調査官として関わります。
 鑑別所では少年の特性を踏まえた処遇を検討し、刑務所でも、臨床心理士が、受刑者にカウンセリングをしたり、集団療法を実施したりしています。
 警察では、少年非行に関する相談を受けているほか、犯罪被害者への支援も行っています。

産業領域

 厚生労働省は職場におけるメンタルヘルス対策を推進しようとする企業に対し、支援専門家が取り組み方法などを助言・指導する「メンタルヘルス対策支援事業」を実施しています。臨床心理士は、そのメンタルヘルス支援専門家の一員として、この事業に協力しています。また、臨床心理士会は、日本経団連、東京経営者協会と業務提携を結び、メンタルヘルス対策を進めています。

開業領域

 臨床心理士が、個人または組織で運営している心理相談機関です。自分のこと、家庭のこと、学校や職場のことなど、種々の心理的な悩みや課題の解決に向けてクライエントとともに取り組み、その人間的成長を支援します。
 メールカウンセリング・訪問カウンセリングなどを実施しているところもあります。

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