臨床心理活動の医療・保健領域で働く臨床心理士の勤め先には、病院、保健所、リハビリテーション施設などがあります。
ひとくちに医療・保健といえど、臨床心理士が活動する領域は年々拡がっているといえます。
働いている場所
医療・保険領域に携わる臨床心理士が働く場所には以下の場所などがあります。
- 病院
- 診療所
- 精神保健福祉センター
- 保健所
- 保健センター
- リハビリテーションセンター
- 老人保健施設
精神科医と臨床心理士の違い
臨床心理士と同じく、心の問題を専門的に扱う人々には精神科医がいます。
両者の違いは、問題へのアプローチにあります。精神科医は医学的な観点から「治療モデル」にのっとり、悪い部分を治していくことを目的とします。
対して臨床心理士は「成長モデル」にのっとり、精神疾患を治すよりも、問題を抱えている人がそれを乗り越えて成長するための支援を行っていきます。
また、臨床心理士は診断に先だって、診断材料とするための心理検査などのアセスメントを行います。そこから得られた情報を元に、精神科医は患者を診察し病名を診断し、症状を改善する薬を処方したりします。ただし、病名の診断や薬の処方は医師の独占業務です。医師以外が行うことはできません。
精神科医療・精神保健に関わる臨床心理士
精神科医療・精神保健では例えば以下のような精神疾患や精神障害を抱える人が臨床心理援助の対象となります。
- 統合失調症
- うつ病
- 人格障害
- パニック障害
精神科医療や精神保健の現場はその機能によって分類されます。
例えば、精神科病院の入院病棟には以下のものがあります。
- 精神科病棟:幅広い精神疾患に対応し治療を提供
- 精神科急性期治療病棟:症状が激しい急性期の患者を集中的に治療
- 精神療養病床:統合失調症やうつ病などの慢性期の患者に長期の治療を提供
また、病棟での入院治療だけでなく精神科病院や診療所への外来もあります。
更に慢性期にある精神障害者の生活を支えるリハビリテーションとして精神科デイケアが医療機関や精神保健センターで実施されています。
小児科医療・母子保健に関わる臨床心理士
小児科医療や母子保健の分野では、以下のような発達障害が疑われる子どもとその両親などが援助の対象となります
- 自閉症
- アスペルガー障害をはじめとする広汎性発達障害
- 精神発達遅滞
- 注意欠陥多動性障害
保健所や保健センターでは、乳幼児健診が実施されています。1歳6ヶ月および3歳の検診時、発達検査や育児支援の相談に臨床心理士が携わる市町村もあります。
この分野で活動する臨床心理士は、子どもの病気や障害を理解しておく必要があります。また子どもだけではなく、その親への支援をする場面が多くなるのでそのためのコミュニケーション技能も不可欠です。
障害を抱えていたとしても子どもと親は長い人生を歩むことになります。そのため、臨床心理士は長期的な視点で子どもと親の関係性を良い方向に育めるように考慮し、援助しなければなりません。
高齢者医療・老人保健に関わる臨床心理士
高齢者医療・老人保健の分野では、以下のような症状の人々に対して臨床心理援助を行います。
- 認知症
- うつ病
- 終末期の患者
高齢者医療・老人保健の現場は、その機能によって分類されます。(以下、下山晴彦編「よくわかる臨床心理学」を参照)
回復期リハビリテーション病棟
脳血管疾患や骨折後の急性期を過ぎた患者の治療とリハビリテーションを行う施設です。
この施設を利用するのは、高齢者だけが使用する施設ではありません。しかし、多くの高齢者が利用しており心理的支援が必要となります。
老人病院(療養病床)
認知症やうつ病の高齢者を対象とした長期的な医療と介護を行う施設です。
老人保健施設
在宅生活継続のために、要介護高齢者を対象としたリハビリテーションや療養を目的とした施設です。
物忘れ外来(精神科・神経内科などの外来)
認知症が疑われる在宅高齢者向けの診療を提供します。
緩和ケア病棟
がんなどの終末期にある患者の身体的・心理的苦痛の軽減などを行う施設です。
高齢者医療の分野では、老年期や終末期に関係する病気や障害を理解する必要があります。人は必ず死を迎えるということを認識した上で、残された時間をその人らしく生きるためにはどのような援助が必要なのかを考慮しなければなりません。