科学者―実践者モデル (scientist-practitioner model)

 科学者―実践者モデルとは、臨床心理士は「臨床心理士としての実践性」だけでなく「心理学研究者としての科学性」も持つべきであるという意味の言葉です。
 1949年に米国で開かれたボルダー会議において確立された臨床心理士の専門性を示す理念です。
 科学者―実践者モデルの目的は、臨床心理学の範囲において科学的な成長を促すことにあります。そこでは精神に関する理論、フィールドワーク、研究方法を確立することが求められます。
 科学者―実践者モデルに示された臨床心理士の専門性のあり方は、現在の欧米の臨床心理学において広く浸透している考え方です。資格制度上の違いから欧米式のあり方を日本に単純に当てはめて考えることはできませんが、科学者―実践者モデルに示されている臨床心理士としての理念は、日本の臨床心理士も身につけておくべきものといえます。

科学者―実践者モデルの示す臨床心理士のあり方

実践者としての側面

 実際に援助活動を実践するには、実践活動におけるさまざまな技能が必要です。臨床心理士に必要な技能は、実践活動を通して培われるものです。
 この点において、実践に勝るものはないといえます。

科学者としての側面

 臨床心理士に求められる科学性とは、心の現象を数量的に捉える技能だけではありません。
 事実を客観的に観察し、仮説を立ててそれを検証し、得られた証拠を元に合理的に考えを進める思考や手続きも含みます。

科学者と実践者の両立

 日本では、臨床心理士の資格取得要件として博士後期過程進学が義務付けられてはいません。そのため、研究に関する訓練が不十分な場合が多く、特に科学者としての姿勢や活動が手薄になりがちだという指摘があります。科学者と実践者を両立することはたやすいことではありませんが、専門家であるならば、科学者―実践者モデルを一つの柱として活動を展開し、両者の折り合いをつけていく必要があります。

科学者―実践者モデルに対する批判

 科学者―実践者モデルには有効性が不足しているという批判があります。そのため、このモデルはより良い科学者や実践者になるのには貢献してないのではというのです。その主な理由としては、臨床心理学研究に必要とされる技術と、実践のための技術は必ずしも対応しているとは限らないというものがあります。

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