ロジャースが1957年に発表した論文です。
ロジャースの治療理論の公式化
ロジャースは、この論文の中で、自身の理論の公式化を行っています。
建設的な人格変化を起こすための条件として、次の6つを挙げ、それがかなりの期間継続する必要があるとしています。
①2人の人が心理的な接触を保っている。
②クライエントは不一致な状態にあり、心理的に傷つきやすく不安な状態にある。
③セラピストは自己一致している状態で、安定し統合されており、ありのままの自分でいられる
④セラピストはクライエントに無条件の肯定的配慮を経験している。
⑤クライエントの見方・感じ方の枠組みに共感的理解をしており、クライエントに伝える努力をしている。
⑥セラピストの共感的理解と無条件の肯定的理解をクライエントに伝えることが、最低限度達成されている。
また、この論文の中で、セラピストに求められる3つの態度が明らかにされています。
それは以下のようなものです。
- セラピストの自己一致
- 無条件の肯定的配慮
- 共感的理解
これは現在でもカウンセラーに求められる3条件となっています。
また、ロジャースの理論では、自己概念と経験の一致・不一致も重要とされます。つまり、理想・信念と現実・事実との開きがポイントになるのです。
図1と図2を比較してみましょう。
図1ではクライエントは自己概念と経験の不一致の状態です。この場合、緊張感が高く不安定であるといえます。図2ではパーソナリティの変化が生じています。潜在的にも緊張や不安が軽減しているパーソナリティの構造をしています。
図中で示される経験とは、これまでの生活を通して直接に体験したことをさします。つまりは現実・事実といっていいでしょう。また、図中の自己概念とは、これまでの生活から見出した、意識化できる価値や思考パターンです。つまり、理想・信念と言い換えてもいいでしょう。
経験と自己概念の円がクロスすることで、3つの領域ができます。
第Ⅰ領域
この部分では、自己概念は、経験によって下支えされ調和しています。
第Ⅱ領域
この領域では、自己概念はあるのにそれを支える経験的な論拠や証拠がない状態です。
第Ⅲ領域
この領域では、何かを経験したにも関わらず、それが自分の自己概念と一致しない状態です。
不一致であっても、この不協和がすぐに不適応になるとは限りません。周囲の非音や文化における価値観などによって違ってきます。不一致が緊張感を引き起こすときには何らかの不適応状態が引き起こされることになります。この不一致を、一致に変化させていくのが来談者中心療法です。しかし、すべてが一致するとは限りません。ただ、図1より図2の方が、自分自身を受け入れる態度が生じやすいといえます。