体験過程 (experiencing)

 E.T.ジェンドリンの体験過程理論の中核をなす概念です。
 心理療法による変化の過程に関する一変数となります。
 体験過程は、主観的で具体的な体験の流れで、他者や状況との絶え間ない相互作用により、人間の中につねに刻々と感じられているものです。

体験過程と無意識の違い

 体験過程とは精神分析における無意識の概念とはちがうものです。体験過程は、具体的に意識されています。しかし、概念的に明瞭なかたちで知られているのではなく、身体的に感じられているものです。体験過程を直接照合することにより、それに導かれて概念化が行われます。
 この体験過程の変数の導入により、心理療法における変化の過程を明確にすることが可能となります。

体験過程の特徴

 体験過程とは感じられるものです。思考されたり、知られたり、言葉によって表現されたものとは異なります。現在のこの瞬間において起こるものであり、今ここで感じることが体験過程です。そして、ある個人によって、その人の現象的場における感じられた素材として直接照合されうるものです。
 体験過程は照合していくことにより、それに導かれて概念的明瞭化が行われます。豊かな意味を暗に含んでおり、これが足がかりとなって、概念化が可能となります。
 具体的に感じられるけれど、まだ概念的に分化していない、前概念的、有機体的な過程なのです。

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