自己理論 (self-theory)

 C.R.ロジャースが来談者中心療法を理論化するにあたり提唱したものです。
 自己理論は人格と行動についての理論です。

内容

 ロジャースは、人間を有機体(生活機能をもつように組織されたシステム)としてとらえました。そして、有機体は先天的傾向として「実現傾向」をもつと仮定したのです。つまり、有機体は、自らを維持・実現・強化しようとする欲求を本来的に持っているというのです。
 ロジャースは有機体がそのときどきに「体験」していることがその人にとっての真実であるとしました。この体験にそって自己を確立していくことが本来のあり方だとロジャースは言いました。

不適応状態における自己理論

 彼の人格論は現象学的な見方に基づいたものです。客観的にどうかより、主観的にどのように受け取っているかということが重要とされます。これを自分自身にあてはめれば、自分自身をどのように認識しているかという「自己概念」が重要ということです。
 環境との相互作用により自分自身についての概念がつくりあげられ、自己の構造が形成されます。自己概念が形成されると、これと矛盾しない経験は取り入れられて自分の一部となります。そして、行動はそのほとんどが自己概念に矛盾しないものとなります。
 これに対して自己概念と矛盾した経験の場合は、まったく意識に上らなかったり、歪曲された形で知覚されるようになります。
 心理的不適応が起こる場合は、重要な意味を持つ経験が自己にとりいれられず、自己との不一致が生じたときです。来談者中心療法は、このような不適応状態を適応的な状態へと変化させる方法である位置付けられます。

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