事象見本法 (event sampling methods)

 イベント・サンプリング法ともよばれます。
 対象者の行動レパートリーの中から選択した行動と、それに関連した環境事象を観察する方法です。

特徴

 事象見本法は,行動を文脈の中でとらえることができるという意味で、質的データ収集に威力を発揮します。
 時間を観察の中の指標として加えることで、行動の頻度や持続時間といった量的データの収集も可能です。

長所と短所

長所

 標的行動を次から次へと観察することができることが長所です。叙述的記録に比べ、データ収集に費やす時間の経済的効率は高いです。
 また、観察される状況や行動の整合性や文脈を維持できます。対象とする事象行動が明確であり、その生起要因が詳しく把握できる。
 さらに、あまり頻繁に生じない行動にも使えるという利点もあります。

短所

 行動自体に注目するため、予め標的となる行動が、いつどこで観察できるかを十分に知っておく必要があります。対象とする事象が生起しやすい設定や場面、時刻を十分把握しておかないと適切な観察ができません。
 さらに対象とする事象が生起するまで待たねばならず、時間的な無駄が多くなります。

記録の方法

 予め対象とする行動を決めておき、実際に観察しながらその行動の生起、経過、結果の状況を記録します。
 記録方法の例には

  • 観察する行動(事象)をカテゴリー化し、チェックリストを作成しておき連続的に現象を記述する方法
  • そこに頻度や時間をチェックする方法
  • 行動の特徴や生起する程度をあらわす尺度を評定・記録する方法

 などがあります
 連続的に記録する方法では、行動が起こるたびにすべて時刻とともに記録します。時間見本法では得られない真の持続時間や頻度が得られます。
 あらかじめカテゴリーを細かく決めている場合には、そのカテゴリーをチェックします。連続的記録のみでは、観察中記録することが多すぎて時間的余裕がなくなります。そのため、記録が均等に細かくできないこともありえます。多くの情報の記録が可能になる方法には、1つの記録用紙のうえで連続記録をとりながらカテゴリーを記録したり、省略文字を用いたりするなどがあります。
 自由に記述できる欄を設けておくと、予測できなかった事象や付随的情報を記述でき、結果の解釈に役立ちます。
 記録の補完に、観察用機器を利用することがあります。これは観察者による同時的な記録を補完し,一過性の行動をより正確に記録するためです。観察用機器を利用することで、後で気づいたことをもう一度見直すことができ、観察当初に予測できなかった点まで検討することが可能になります。

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