MMPI(ミネソタ多面人格目録) (Minnesota Multiphasic Personality Inventory)

 ミネソタ大学のS.R.ハサウェイとJ.C.マッキンリーが開発した、質問紙法の性格検査です。

 最初の手続きは1943年に刊行されました。
 原著者たちの当初の目的は精神医学的診断を客観化することです。現在では臨床心理学的観点から人格特徴を叙述する手段として研究と臨床査定に幅広く使われています。
 550問の質問項目からなります。各項目は短い自己叙述文です。自己叙述文の内容には、精神および身体健康、家庭・職業・教育・性・社会・政治・宗教・文化等に対する態度、精神病理、性度、ならびに受検態度があります。質問数の多さ、尺度の詳細性において、信頼性が高い性格検査の1つです。
 回答は「あてはまる」「あてはまらない」の諾否型(true-false type)の検査です。
「臨床尺度」「妥当尺度」、そして多数の「追加尺度」から構成されます。
 精神科から心理相談まであらゆる場面で用いられます。性格研究においては最もよく用いられる性格検査の1つです。
 欠点は、質問数が多いため、検査に時間がかかることです。

世界でのMMPI

 MMPIは、心理査定の中でも最も利用度が高く研究文献も最も多いものです。独・仏・伊・西・ギリシャ・トルコ・ペルシャ・ヘブライ・中国・韓国語に翻訳されています。わが国でもいくつかの日本語版が作成されてきました。現在公刊されているのは「MMPI新日本語版」です。
 J.N.近年になってアメリカではバトラーらがMMPI-2(1989)を刊行しました。これは項目文章を改訂し項目数を若干増やした改定案です。また青年期用のMMPI-A(1992)も発表されています。

MMPIの測定尺度

臨床尺度(10尺度)

 主として人格特徴を査定する目的で作成されています。
 特徴は外的基準に用いた経験的アプローチによって項目を構成している点です。
 臨床尺度は、第1尺度から第10尺度まであります。
 各尺度について以下の通りです(括弧内は尺度番号)。
(1)心気症:精神面を無視する傾向と疾患・健康への懸念、精神面を無視する傾向や疾病への懸念
(2)抑うつ:抑うつ傾向と不適応感、現状への不満・不適応感や抑うつ傾向
(3)ヒステリー:回避手段としての拒否・楽観的で明るい面、ストレス対処の仕方、自分の感情の洞察
(4)精神病質偏奇:人・体制・権威に逆らう傾向、人および規制の体制・権威に逆らう傾向
(5)男子性・女子性:ステレオタイプな性的役割を取得している程度と性役割感
(6)パラノイア:対人感受性・疑問を持つ、対人関係上の敏感さ、猜疑傾向
(7) 精神衰弱:不安をはじめとする諸種の神経症傾向、不安感をはじめとする種々の神経症的傾向
(8) 精神分裂病:現実との接触の仕方、統制と疎外感
(9)軽躁病:活動性
(10) 社会的内向性:社会参加や対人接触を避ける傾向

妥当性尺度(4尺度)

 妥当性尺度は受検態度の偏りを査定するために設けられています。
 項目は以下の通りです。

  • 疑問尺度(?尺度):回答しなかった項目数で示される不決断や拒否的態度
  • 虚構尺度(L尺度):社会的に望ましい方向に答える傾向、一般的な弱点を受け入れない傾向
  • 頻度尺度(F尺度):受検態度の偏りと適応水準、希有な回答で表される一般的考え方とのずれ
  • 修正尺度(K尺度):防衛的な受検態度、自己開示と自己防衛のバランスを査定

追加尺度

 おおよそ500個におよびます。不安尺度として知られているJ.A.タイラーのMAS(顕在性不安尺度)も追加尺度の一つです。

MMPIの解釈

 各尺度の標準得点(T得点)にもとづいて描いたプロフィールの高さと形状を読み取ります。
 解釈では被験者の受験態度、適応の程度と型ならびに人格特徴を推論します。基にすることは、各尺度単独の解釈仮説と尺度パターンの解釈仮説です。
 臨床査定の場合は、このほかに精神医学的診断印象を加えるのが普通です。
 MMPIで解釈者の拠って立つ人格理論に沿った推論が可能な点も、この検査の1つの特徴です。
 最近ではコンピュータを利用した自動解釈プログラムも開発されています。

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