Y-G検査 (矢田部-ギルフォード性格検査:Yatabe-Guilford Personality Inventory)

 1940年代はじめにJ.P.ギルフォードらが作成した13種類の性格特性を測定する3つの質問紙がモデルです。
 1950年代に矢田部達郎らによって日本版の尺度が構成しました。さらに辻岡美延らによって現行の形式にされました。

基盤にしている性格理論

 性格がすべての人間において共通ないくつかの部分、すなわち特性の集まりとして成り立つとする理論を基盤としています。個人によって各特性の程度に差があり、それが個人の性格を形成しています。
 しかしながら、類型論の立場からの解釈法も示しています。これは性格を部分の集まりではなく独自な全体としてとらえ、いくつかの典型的なタイプに分類するものです。

特徴

 回答は「はい」「?」「いいえ」の3件法です。
 因子分析によって12の下位尺度を設けます。各下位尺度ごとに10問計120問の質問項目から構成されます。
 12の下位尺度は以下の通りです。
(1)抑うつ性
(2)気分の変化
(3)劣等感
(4)神経質
(5)客観的
(6)協調的
(7)攻撃的
(8)活動的
(9)のんきさ
(10)思考的内向
(11)支配性
(12)社会的内向

長所と短所

長所

 実施と得点が容易です。多面的な診断が可能であるため、広く用いられています。検査時間は約30分程度で実施は回答にマークするだけであり、採点も容易です。検査結果は、書く尺度の素点を結び、プロフィールを描く形式でわかりやすいです。
 多用され先行研究も多く、尺度得点から12特性の程度が明確に理解できることも長所の一つです。

短所

 虚偽尺度を有していないため、回答者の意図的な反応歪曲に弱いという欠点があります。
 因子レベルと類型レベルの解釈の理論的根拠が不明確です。

実施法

 集団法が基本ですが個人法も可能です。大切なのは、被験者が各自のペースで回答するのではないことです。検査実施者が1項目あたり8~10秒の一定の速度で進める強制速度法を用いています。回答間隔を定めることで、おもに回答の安定性を求めていると考えられます。
 採点方法は、きわめて容易です。用紙の糊付け部分をはがすと○、●、△、▲が現れます。○が2点、△が1点で横に行毎に足せば、0点から20点までの尺度得点が計算されます。

結果の判定法

 尺度レベル、因子レベルそして類型レベルの3種類があります。

尺度レベルの判定

 成人版や高校生版などのそれぞれの標準化集団のデータからパーセンタイルと5段階標準点が示されます。
 たとえば、成人男性で抑うつ性の尺度得点が6点ならば、パーセンタイルがほぼ20、つまりは低い方から約20%の位置で、標準点は2に入りやや低いと解釈されます。

因子レベルでの判定

 12尺度の次の5つの群に分けられています。

  • 抑うつ性、回帰性傾向、劣等感、神経質を情緒不安定因子
  • 客観性欠除、協調性欠除、攻撃性を社会不適応因子
  • 活動性と衝動性を衝動性因子
  • 衝動性と思考的外向を非内省性因子
  • 支配性と社会的外向を主導性因子としている

 因子内の尺度は類似しているために、5段階標準点も類似した場合には、その因子の特徴が強いとされます。同一因子内で5段標準点がかけ離れた場合には、でたらめな反応人格構造の矛盾を調べる必要があります。なお、おれらの因子は12尺度を因子分析した結果の因子ではなく、類似した尺度を集めて命名されたものです。

類型レベルの判定

 全体的プロフィールの傾向から、プロフィールは5種類に分類され、類型論的な評価も可能です。
 A型、B型、C型、D型、E型に分類されます。
 A型は「平均型」です。真ん中よりのプロフィールで、すべての尺度において平均的です。取り立てて特徴のある性格特徴を示さない、ほどほどにバランスが取れているタイプです。あるいは積極的な自己表現を避けて、「?」の回答を多く示すタイプの人に多いです。
 B型は「不安定不適応積極型」です。右寄りのプロフィールで、情緒不安定、社会的不適応、活動的、外交的です。性格のバランスの悪さが行動として現れやすいです。そのために対人関係上のトラブルが生じる場合があります。細かいことを気にしたり落ち込みやすい反面、活動的・行動的です。学校や職場でトラブルメーカーになりやすいタイプといわれます。
 C型は「安定適応消極型」です。左寄りのプロフィールで、情緒的に安定し、社会によく適応できるが、消極的で内向的なタイプです。人ともトラブルを起こさず、控えめで慎重に行動する傾向があります。
 D型は「安定適応積極型」です。右下がりのプロフィールです。情緒的に安定し社会によく適応できる上に、活動的・積極的というタイプです。対人関係にも優れており、学校や職場でリーダーの役割をこなす人が多いともいわれます。問題は少なく、B型とは逆に性格のよい面が外に出やすい、好ましい性格とされます。ただし、自分をよく見せようとする傾向がある人の場合にも現れやすいです。
 E型は「不安定不適応消極型」です。左下がりのプロフィールです。情緒的に不安定で社会にも適応しにくいです。内向的で消極的なタイプです。D型とは正反対の特徴を持っています。ものごとに対して受身的で時に無気力的なこともあります。目立ったトラブルは起こさないが、心の悩みを自ら抱えやすいタイプです。

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