シゾイドパーソナリティ障害とは、A群パーソナリティ障害の1つで、他人とのかかわりを好まず、自分の世界に浸ることを特徴とします。
他者への関心や対人接触への欲求が乏しく、いわゆる引きこもりの状態にある場合も少なくありません。
喜怒哀楽の感情をあらわにすることがあまりなく、周囲には冷たい人という印象を与えやすいです。これは別に無理に感情を抑えているのではなく、感情の起伏が元々小さいのです。
服装や外見にも関心がなく、流行やファッションとは無縁です。異性に対する関心も乏しく、性的関係を積極的に持ちたいとも思いません。
DSM-Ⅳ-TRでの診断項目
以下の7つの基準のうち、4つ以上が当てはまる。
(1)家族を含めて、人と親しい関係を持つことを楽しいと思わず、持ちたいと思わない。
(2)ほとんどいつも孤立したような行動をとる。
(3)他人と性体験を持つことにあまり興味を見せない。
(4)趣味のような、喜びを感じる活動にあまり関心がない。
(5)親、兄弟以外に親しい人や信頼できる人がいない。
(6)他人の称賛にも批判にも無関心に見える。
(7)よそよそしく冷たい。感情の幅が乏しい。
原因と背景
精神分析的な観点では、このタイプの人は幼い頃に母親からちゃんとした愛情を受けられなかったために、愛情や保護を求めなくなってしまったとされています。しかし、実際にはきちんと愛情を受けたにも関わらずシゾイドパーソナリティ障害の傾向を示す人もいるので、一概に育ってきた環境が原因とは言えないようです。
最近の研究では、遺伝的、生物学的要因も大きいと言われています。特にドーパミン系という脳の神経回路の異常が過敏性を生み、そのために対人接触を避けようとする傾向につながると考えられています。つまり、このタイプの人は感情が鈍感だから人と付き合わないのではなく、敏感すぎるから人と接するのが苦痛になってしまうのです。
対応・サポートの方法
このタイプの人とは距離を置いた態度で淡々と接し、少しずつ距離を縮めていくことが安全で信頼される方法です。このタイプの人は、己の世界に他人が入り込んでくることを恐れます。そのため、いきなり馴れ馴れしい言葉や態度をとって接していくのは逆効果です。
また、本人のペースやタイミングを尊重することも重要です。傍からすると、言動がゆっくりしていて、効率が悪いようにも見えます。しかし、本人の心のプロセスを無視して、急かすような態度をとるとかえって状況は悪くなります。
治療・克服の方法
まず大切なのは、最低限のコミュニケーションのスキルを身に着けることです。このタイプの人は、円滑なコミュニケーションが取れず、社会的・経済的な自立ができていない場合が多々あります。ただし、コミュニケーション能力を向上させるに際して気を付けなくてはいけないのは、無理に社交的な性格に変えようとしないことです。対人接触をあまり好まないという本人の特性は尊重しつつ、社会生活に最低限必要なコミュニケーション能力を習得していくようにします。
また、人生設計や仕事を選ぶに際しては、地味で孤独な作業を淡々と続けられる分野を選んだ方がこのタイプの人の特性を活かせます。また、人間よりも自然や機械を相手にした仕事が向いています。その例としてはエンジニア、学者、研究者、プログラマー、農業、動物や自然の保護に関わる仕事、僧侶、図書館司書などがあります。