回避性パーソナリティ障害 (avoidant personality disorder)

 回避性パーソナリティ障害とは、C群パーソナリティ障害の1つで、失敗や傷つくことを極度に恐れ、対人接触や課題への挑戦を回避することを特徴とします。
 回避性パーソナリティ障害の人は、失敗して傷つくくらいなら最初から何事にも挑戦しない方がいいと考えます。様々な出会いや自らの成長を楽しむよりも、失敗したり嫌な思いをする危険の方にばかりに目を奪われ社会参加に消極的です。
 自分に対する自信の無さから、積極的に人と関わろうとせず、引きこもりになってしまうケースも多々あります。

DSM-Ⅳ-TRでの診断項目

 以下の7つの基準のうち、4つ以上が当てはまる。
(1)人から批判、否認、拒絶を恐れ、重要な人と会わなければならない機会を避けてしまう。
(2)好かれていると確信できなければ、人付き合いをしない。
(3)恥をかかされたり馬鹿にされたりするのを恐れ、親密な相手に対しても遠慮する。
(4)社会的な状況では、批判・拒絶されることに心が奪われる。
(5)不全感のため、新しい対人関係がつくれない。
(6)自分は社会的にうまくやっていけない、自分には長所がない、自分は人よりも劣っているなどと思っている。
(7)恥をかくかも知れないからと思い、新しいことを始めたり、個人的にリスクを冒すことに異常なほど引っ込み思案である。

原因と背景

 消極的で不安や緊張の強い遺伝的要因も関与も考えられますが、元々積極的だった子供が、何らかのきっかけで次第に自信を失い、失敗や傷つきに敏感になるケースも少なくありません。
 そうしたきっかけには、いじめ、友人からの拒否、親からいつも否定的に扱われるなどの体験があります。それらのネガティブな経験が発端となり自分の言動に自信を持てなくなってしまうのです。
 もう一つの典型的なパターンとしては、幼い頃から親に支配されて勉強などを強いられた場合も挙げられます。この場合、親に強いられた行動をしているうちに子どもは努力することは辛いことであると思い込むようになっていきます。そこに更に挫折体験が生じると、努力することは無価値であるという信念が生まれ、無気力なパーソナリティが形成されます。

対応・サポートの方法

 まずやれることから回避性パーソナリティ障害を患っている本人にやってもらうことが重要です。この際に重要なのは、本人の意思を尊重し、周りはあくまでサポート役に徹するということです。回避性パーソナリティ障害の人に、何かをしなさいと指示を出してもやらされているという嫌悪感が募るばかりで自信の回復にはつながりません。援助者は回避性パーソナリティ障害の人から意見を求められたときに必要最低限のアドバイスをするにとどめた方がよいでしょう。
 本人の意志をどれだけ尊重できるかが、回避性パーソナリティ障害の人が自主性を持てるかどうかの分かれ目です。「そんな下らないことをするな」「これはこうするべきだ」などと上から押さえつけるような物言いをしてしまってはすべてが水の泡です。
 どんな小さいことでもいいから、自分でもできることがあると回避性パーソナリティ障害の人に思ってもらうことが何よりも大切です。

治療・克服の方法

 回避性パーソナリティ障害の人は、自信のなさと失敗への不安に囚われて、身動きが取れなくなっています。そういう場合、迷ったときはやってみると考えるのが重要です。
 ただし、その際にうまくいく経験ばかりを求めないことも大切です。失敗する体験は成功する経験より大切でもあるのです。
 成熟した回避性パーソナリティの傾向を持つ人は、なじんだ習慣やいつも通りの繰り返しに安心を覚えます。しかし、必要な場合はそれほど不安がらずに新しい試みにも挑戦することができます。

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