反社会性パーソナリティ障害 (antisocial personality disorder)

 反社会性パーソナリティ障害とは、B群パーソナリティ障害の1つで、犯罪行為などの反社会的な行動を取りながら罪悪感を持たないことを特徴とします。
 反社会性パーソナリティ障害の人は、他者への共感性に乏しく、自分の欲求のためならば、他人を騙したり傷つけたりすることを平気でやってのけます。
 行動は衝動的でずる賢く、スリルを求めようとします。強さや勝ち負けにこだわり、自分の力を示すためならば命を賭けることも厭いません。

DSM-Ⅳ-TRでの診断項目

A.以下の7つの基準のうち、3つ以上が当てはまる。 
 (1)法を守るという社会的な規範に従うことができない。
 (2)人をだます傾向がある。例えば、自分の利益や快楽のために嘘をつく、偽名を使う、人をだますといったことを繰り返す。
 (3)衝動性が強く、将来の計画が立てられない。
 (4)攻撃的で、頻繁にケンカしたり、繰り返し暴力をふるう。
 (5)自分や他人の安全を考えない向こう見ずさがある。
 (6)一つの仕事を続けられない、借金を返さないといったことを繰り返すなどの、一貫した無責任さがある。
 (7)人を傷つけたりいじめたり、人のものを盗んだりしても、反省することなく、良心の呵責を感じない。
B.その人は少なくとも18歳である。
C.15歳以前に発症した行為障害(万引き、暴力、人を騙すなどの非行行為を繰り返すこと)の証拠がある。
D.反社会的な行為が起こるのは、統合失調症や躁病エピソードの経過中のみではない。

原因と背景

 反社会性パーソナリティ障害の人は、幼い頃から両親による虐待や育児放棄、あるいは溺愛など愛情の過不足が見られます。また、両親が愛情を与えない代わりに、祖父母や第三者が不憫に思って甘やかしたというケースも存在します。
 こうした養育の問題は親だけに問題があるわけではない場合も存在します。反社会性パーソナリティ障害の人では、かなりの割合で幼い頃から発達障害などの影響で問題行動が見られます。元々が育てにくいがために不適切な養育を与えてしまい問題をこじらせてしまうこともよくある状況です。
 出産時のトラブルや妊娠中の喫煙との関係も指摘されています。脳神経系の発達に不利な状況が発達面での障害を引き起こし、育てにくい子どもを親が虐待してしまうという悪循環が生じるのです。
 また、反社会的な考え方や行動パターン、情報に小さい頃から触れているかも大きな要因です。家庭や地域社会からの影響、あるいはテレビやゲームで攻撃的な映像に触れられそこから反社会的な行動を学習してしまうのではないかということも指摘されています。

対応・サポートの方法

 反社会性パーソナリティ障害の人は、幼い頃から親や教師に否定されながら育ってきたことが少なくありません。そのため彼らは周りの人間は自分を害する敵であると認識しています。彼らと接する場合は、感情的な否定にならないように中立的な言葉や行動をとらなくてはなりません。彼らに信頼されるのには時間がかかりますが、信頼を得られれば多少の注意は受け入れてくれるようになります。
 反社会性パーソナリティ障害の人と関わる上では、弱さをみせてはいけません。彼らは強い人間に憧れ、弱い人間を蔑視します。彼らの態度にうろたえたり、おもねるような態度を取ると彼らは相手を弱者と見なし、泣き落としや威嚇などで相手を思い通りに操ろうとしてきます。付け入るスキを与えないことが重要です。
 反社会性パーソナリティ障害の人が更正できたケースでは、信頼できる人物に出会えたという場合が少なくありません。それは親や兄弟の場合もありますが、多くの場合はそれ以外の第三者です。反社会性パーソナリティ障害の人の更正は、世の中には信じられる人間もいるのだと実感させ、人間不信を和らげていく必要があります。

治療・克服の方法

 反社会性パーソナリティ障害の人は、そもそも人を信じません。そのため医者も信じないわけで、自ら医療機関を受診することはまずなく、誰かに連れて行かれても治療は長くは続きません。反社会性パーソナリティ障害の人の治療は、矯正施設などの厳格な規則が設けられた環境で、一定の制約のもとに治療者に管理されながら治療を受けるかたちが取られます。
 矯正施設での治療目的は、更正をはかり、社会人として社会に復帰することです。人間不信を和らげるとともに、本人の特性を生かす場を与えることが回復のポイントとなります。
 成熟した反社会性パーソナリティの傾向を持つ人は、行動や感情のコントロールする術を身につけています。一瞬の損得ではなく長期的な損得が考えられます。そうなるためには、訓練と導いてくれる環境が大切です。良い導き手に出会えることが一つのきっかけになり、少々強引にでも本人を鍛えてくれるような環境が、このタイプの人が社会人として成熟するためには必要です。

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