少数者影響過程

 少数者影響過程とは、ある集団内で少数しか持たない意見が、多数者の意見に影響を与えることをいいます。
 少数者には、集団におけるリーダーなどのように社会的に承認を受けている者と、逸脱者などのように社会的な承認を受けていない者の2タイプがあります。

モスコビッチらの実験と転換

 心理学者モスコビッチらは、光度の異なる36枚のスライドを6人の実験参加者に見せて色を答えてもらう実験を行いました。
 一般には青に見えるスライドでしたが、実験参加者のうち2人はサクラで、すべて「緑」と答えるように指示してありました。
 さらにサクラが36枚のうち24枚だけを「緑」と答える、一貫性に欠けるパターンも行いました。
 それぞれの結果は、常に一貫性を持って緑と答える場合には他の多数者も緑と答える確率が高くなりました。さらに、多数者に青と緑の中間色のうち、どこから緑と呼ぶかについて尋ねたところ、先に「緑」と言い続ける少数者と過ごした多数者は緑と呼ぶ色の範囲が広がっていました。つまり、多数者は少数者の意見に合わせて緑と言っていただけではなく、知覚レベルで少数者の影響を受けていたことになります。
 また、モスコビッチは、少数者の影響が多数者に認知的葛藤を引き起こし、内面的同調をもたらしたと考えました。これを「転換」と呼び、少数者影響特有の質的特性としました。

少数者の意見が受け入れてもらう条件

 ネメスは、多数者から変わり者とみなされ意見を蔑ろにされないための条件について研究しました。その場合において、問題の争点以外は多数者との共通点を備えていることの重要性を説いています。
 つまり、多数者が少数者に対して異物感を抱いていないことが大切であると考えたわけです。逆に言えば、多数者が少数者を仲間と考え、妥当性を革新して主張していると感じれば、異なった意見でも受け入れやすくなるわけです。

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