人間関係の形成について説明する仮説には大きく「初期分化説」と「段階的分化説」があります。
初期分化説とは、出会った初期の段階、つまり一目見た段階で好印象を抱くなどして、ごく初期にその後の付き合い方も決まるという仮説です。そして、実際に付き合いはじめると、自分にとって望ましい相手の面が積極的に見出されて、親密な関係が形成されていくとされます。
一方で段階的分化説とは、時間の経過に伴い徐々に変容していくという仮説です。この仮説では最初のうちは自分と似た点(類似性)があるかを通して関係を始め、その後は自分の欲求を補ってくれるかどうかにより相手との関係を形成していきます。
この二つの仮説はどちらか一方が絶対的に正しいということではなく、一人の人間であっても付き合う相手によって、初期分化説と段階的分化説で説明できる付き合い方をすることがあるのです。
SVR理論
SVR理論とは、対人関係の発展を以下の3段階に分けて説明する理論です。
S:Stimulus(相手からの刺激)
顔立ちや外見、声、性格などに魅力を感じる段階です。
V:Value(相手の価値)
趣味や価値観を共有している、類似性重視の段階です。相手の気持ちを汲み取るなど、情感の共有も含みます。
R:Role(お互いの役割)
相手ができないこと、苦手なことを補い合う、相補性重視の段階です。
付き合いが長くなるにつれ、その内容も深くなる。
人間関係の崩壊
SVR理論での段階がお互いの役割を相補する段階に近づくにつれ、以下のことが求められます。
- 平衡性:金銭や時間など自分が投入しているものと相手から得られるものの比率が釣り合っているか
- 互恵性:相手から報酬を受けたらそれにお返しできるか否か
これらが守れなくなると、人は人間関係に葛藤を持つようになります。その葛藤が深まり限界を超えると人間関係が崩壊するとされています。
葛藤への対処
前述の通り人間関係の崩壊と葛藤には密接な関係があります。
さまざまな葛藤への対処行動については、ラズバルトが4つに分けたものがあります。
建設的行動
関係を維持しようとする行動です。
- 対話:関係満足度が高いときやそれまでの投資が大きいときに生じます
- 待機:問題が深刻でないときやそれまでの投資が大きいときに生じます
破壊的行動
関係を破壊しようとする行動です。
- 無視:関係満足度が低く、それまでの投資も少ないときに生じます
- 退去:関係満足度が低く、投資も少なく、他に妥当な選択肢があるときに生じます