ブレーズ・パスカルは、フランスのオベーニュ地方に生まれました。16歳のときに「パスカルの定理」を明らかにするなど、幼い頃から卓抜した数学の才能を発揮しました。
宗教家でもあった彼はポール・ロワイヤル修道院のジャンセニスト(カトリック教会によって異端的とされたキリスト教思想)とも交流が深く、禁欲的な生活を送っていたとされます。
主な著書には『パンセ』があり、これはパスカルの死後、修道院関係者らによってまとめられたものです。
人間は考える葦である
「人間は考える葦である」という言葉は、パスカルの哲学的思想を表したものです。
パスカルは、広大な宇宙と比べたときに人間は一本の葦にすぎないと例えました。しかし、その上で、人間の思考は宇宙全体をもその対象にできると説きました(図1)。
パスカルによれば、人間は真理と正義を渇望しながらそれを実現できず、かといってそれを断念できるわけでもありません。つまり人間は、無限と無という二つの間を漂う不安定な中間者なのです。
しかし、そうした不幸さは植物や獣には意識できないものです。真理や正義に到達できない人間は、宇宙の中で矮小な存在ですが、その自分のあり方を意識し、より高い次元を求める限りでは偉大でもあります。
この中間的な性質ゆえ、人間は自分が知りうる有限の範囲の彼方に無限である神を想定するとパスカルは説きます。そして、これはもはや理性でしか解き明かせないとして、パスカルは神への信仰を重視しました。