ジャン=ジャック・ルソー

 ジャン=ジャック・ルソーは、啓蒙思想時代にスイスのジュネーヴに生まれた哲学者です。また、作曲家、劇作家、詩人としても知られています。
 彼は、文明の進歩や社会の不合理を非難し、フランス革命の預言者的な役割を果たします。
 著書には『人間不平等起源論』『社会契約論』『エミール』などがあります。

自然に還れ

 ルソーは、ホッブズやロックとともに社会契約論を代表する哲学者です。「自然に還れ」とは、ルソーの社会契約論の根本を表す言葉をいいます。
 ルソーによれば、自然な状態では他者への憐れみの情を持っているとされます。これにより、自己愛が育まれ、幸福を感じることができます。
 ところが、土地や財産などの私有が始まると、人々の間に不平等が生じます。これにより争いが生じます。争いを収めるためには、公権力により不平等を法的に認めるしかありません。これにより、不平等な状態は固定されます。よって、人工的な秩序は、自然な状態に存在していた幸福は失われます。ルソーはこれを堕落状態だと考えました。
 堕落状態を克服するために、ルソーは社会契約論を提案しました。各人が共同体と完全に一体化・同一化するというものです。つまりは、元々の自然な状態に還ることで人々は利害に束縛されない自由を手に入れられるとルソーは考えたのです。

一般意志

 一般意志とは、共同体の共通利益だけを考える状態をいいます。自然な状態に還ることにより、各人の特殊意志や、その総体である全体意志から逃れられます。
 人々が一般意志を持つためには、利害関係の調整役である代議士による政治では足らないとルソーは考えました。そして、市民全員が法案の審議や採決などに直接関わる直接民主制をとるべきと唱えました。
 このルソーの考え方は、同時代の人々には受け入れられませんでしたが、フランス革命の最中にジャコバン派に影響を与えました。

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