デイヴィッド・ヒュームは、スコットランド出身の哲学者です。彼はエディンバラ大学に入学したものの、2年で故郷に戻り、その後はフランスで執筆活動を行いました。
著書には『人性論』などがあります。
彼は哲学者としてだけではなく、弁護士会司書、大使秘書、国務次官としても活動しました。
懐疑論
ヒュームは経験論の原理を徹底させ、認識や理性の働き、あるいは因果関係について疑いました。これを懐疑論といいます。
様々な経験をする上で、まず心に現れるのは「印象」です。印象とは、対象を初めて見たいり、触ったりして感じることをいいます。例えば、「火に手を差し出したら熱くて火傷した」などです。
印象が繰り返されると今度は「観念」は生まれます。例えば、同じ経験を何度か繰り返すうちに「火は熱くて危険なもの」と分かるようになります。これが観念です。
心に現れる観念はすべてに対応する印象を持っていることになります。しかし、これらは所詮は主観の産物であって印象同士には何の因果関係もないとヒュームは説きます。つまり、日常的な知識も実は確実性を持たず、推測の域を出ないということになります。
このように、過去にあったことを未来にも期待することを恒常的連接といい、因果性だとヒュームはいいます。つまり、因果性とは主観によって作り出されて、自然の中に客観的に存在するわけではないとしたのです。
このヒュームの考え方は、自然の中に因果法則を発見していく自然科学を否定するものです。この衝撃に受けたカントは反論のために『純粋理性批判』を著しました。