ジョン・ロック

 ジョン・ロックは、イギリス生まれの哲学者であり政治思想家でもあった人物です。
 オックスフォード大学でスコラ哲学を学びましたが、それに満足できず、自然科学やデカルトの思想などを研究しました。そして、ロックは頭の中だけで理論を組み立てる思弁より各人の経験を重視する哲学を唱えます。経験を重視するロックは思想を経験論とよばれます。
 また、ホッブズと同じく社会契約について論じましたが、ロックの場合は専制政治を批判し、主権は君主ではなく人民にあると主張しました。
 著作には、『統治論』や『人間知性論』があります。

タブラ・ラサ(白紙)

 思弁より経験を重視したロックは、知識や認識に関してタブラ・ラサ(白紙)という概念を提唱しました。
 タブラ・ラサとは、経験を得る前のまっさらな人間の心の状態をいいます。知性はもともとタブラ・ラサであり、経験を積むことでそこに知識が書き込まれていくとロックは考えたのです。これはプラトンやデカルトが考えていた生得観念(生まれながらに心を持つという考え方)を否定するものです。
 経験は、外界の観察と心の内省からなります。人間は観察によって外界を知覚し、それを内省することによって複合的に組み合わせていきます。

物体の第一性質と第二性質

 経験を重視するロックの経験論は、デカルトの思弁を重視する合理論とは対極にあるといえます。しかし、ロックにはデカルトの合理論の影響も残っていました。例えば、物体の第一性質と第二性質という考え方はデカルトの理論の影響を受けているといます。
 第一性質とは、大きさや重さ、位置などの数値で表せる性質をいいます。これは物体本来の性質であるとされます。
 第二性質とは、味や手触りなど数値にできない性質をいいます。これは見る人の見る人の主観的な知覚を引き起こす性質をいいます。
 しかし、ロックの唱えた一次性質と二次性質という考え方は、バークリーの批判を受けます。バークリーは物体の性質に一次も二次もなく、知覚されて初めて存在しているといえるとしました。

ロックの社会契約論

 ロックは経験論とともに、社会契約論も展開しました。
 ロックの社会契約論も、ホッブズのものと同じく、人間の自然な状態とは何かを想定するところから展開されます。
 ロックによれば、各人が理性の法である自然法に従っている状態が自然状態であるとされます。これは他人の財産や自由、生命に害を加えないで行動していることを指します。
 自然状態ですでに存在する財産・自由・生命を一層確かなものにするために、各人は公権力と契約を結び、自らの財産・自由・生命を保護してもらいます。この契約は人民と公権力との間のものなので、公権力が各人の権利を侵害する場合、服従を拒む抵抗権や革命権があるとロックは考えました。

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