セーレン・キルケゴールはデンマークに生まれた哲学者で、実存哲学の創始者として知られています。
彼は、理性に逆らう事実の中で、もっとも際立った自分自身の事実存在に他ならないという思いを抱き、それを実存と呼びました。
彼はキリスト教信仰を通し、人間のあり方を希求した立場は信仰の反対である絶望を著作には『死にいたる病』で主張しました。
実存の3種類のあり方
キルケゴールは、実存とは現実に存在している自分自身を「実存」と呼びました。その上で彼は実存のあり方を以下の3.種類に区別しました。
美的実存
美的実存は快楽を際限なく追求し、自分は世間とは無関係だと言わんばかりに謳歌します。しかし、この状態はかえって自分を見失い虚無感に陥ってしまいます。
倫理的実存
倫理的実存は、様々な選択肢の中から道を選んでいき、自分を実現していく中に自由を見出します。しかし、あまりに厳しく自分の正義を追求すればかえって自己中心に陥ります。その結果、理想と現実が断絶し最後は絶望に陥ります。
宗教的実存
宗教的実存は、自分の存在根拠である神に全力で関わろうとします。
ただし、宗教性には2種類あるとキルケゴールはいいます。一つ目の宗教性とは、自分たちの教義こそ真理であるとする宗教一般の立場です。もう一つの宗教性は自己の信念もある方も虚偽であり、他者である神の恩恵によってのみ自分は救済されるという立場です。キルケゴールは後者の宗教性においてのみ自分の本当のあり方を見出せると考えました。