ジェレミ・ベンサムは、イギリスの哲学者・政治学者だった人物です。
彼はロンドンのピタルフィールズで富裕な家庭に生まれます。ウェストミンスター校に入学し、その後、12歳のときには、父親によってオックスフォード大学のクィーンズカレッジに入れられ、後に文学修士号を修めることになります。更にリンカ-ン法学院で法律家として訓練され、弁護士資格を得ます。
しかし法曹界に失望したベンサムは、法律を実践するのではなく、法律について著述することを決めます。そして、人生を法律への批判とその改良方法の提案に捧げました。
彼は個人の利益と社会の利得を一致させるために功利主義を主張しました。
最大多数の最大幸福
最大多数の最大幸福とは、功利主義の基本原理です。
功利主義の考え方では、人間は誰でも自らの幸福を追求するという前提から話が始まります。人は通常自分のために行動します。
しかし、利口な人間の場合、大きな幸福を得るには他人の助けが必要であることに気づきます。社会全体が幸せにならなければ、個人の幸せもありえません。
そこで、社会全体の幸福をできるだけ大きくし、それを可能な限り多くの人に配分する(最大多数の最大幸福)ことが肝要であるとベンサムは説きます。
功利主義の長所
功利主義の長所は、法の意味を説明できることにあります。
個人の利益追求は社会全体の利益としばしば衝突します。自然に任せておけば、対立する利害の調和を人工的に作り出すことに法があるのだと功利主義を用いて説明できます。
功利主義の問題点
功利主義の問題点は、まず一部の者が不幸になることが社会全体の利益のために正当化されるおそれがあることです。
また、「最大多数の最大幸福」は多くの幸福を生み出すべしという原理と、広くそれを分配すべしという2つの原理から成り立ちますが、両者はときとして矛盾します。例えば、国家予算を公平に少しずつバラまくような政策をするより、少数の主要な機関に多く割り当てた方が成果が大きく国民に還元されることにつながる場合があります。