トマス・ホッブズ

 トマス・ホッブズは、イギリス生まれの哲学者であり政治思想家だった人物です。
 デカルトなどともに機械論的世界観の先駆的哲学者の一人とされます。また、スピノザなどとともに唯物論の先駆的思索を行った哲学者の一人でもあります。
 ホッブズの著作には『哲学原論』や『リヴァイアサン』があります。

万人の万人に対する戦い

 ホッブズは、人間はただの物質であり、そこに精神など存在しないもの考えました。つまり、ホッブズは人間とは心臓を動力源とした自動機械のようなものとしたのです。
 ホッブズの考えでは、人間も世界における物質のひとつなので、他の物質の作用を受けます。感覚によって外界から作用を受け、そこから快と不快が生じます。人間の全活動は、快を求める欲求か、不快を避ける嫌悪が基本となります。ホッブズによれば、最も自然な人間とは、自己の欲求を満たすために活動する動物です。
 しかし、人間の基本的な性質が欲求を求めるものであるとすると、結果として欲求を満たすための衝突が生じます。これが「万人の万人に対する戦い」です。

リヴァイアサン

 リヴァイアサンとはホッブズの著作の名前であり、近代国家に対する比喩をいいます。
 欲求を満たそうと万人が万人に対して戦い合うのは危険な状態です。誰だって戦いによって自らに死がもたらされるのは回避したいと考えます。こういった死への恐怖から、人々には平和を求める情念が生まれます。その結果として、人間は理性的に話し合うことを覚え、各人がよりよく生きる、最も合理的な方法を模索します。人々が共存するためには最低限のルールである自然法が求められ、自然法を監督する強力な公権力が必要です。その方法として、人々は君主制の近代国家があるとホッブズはいいます。
 ホッブズの社会契約論では、個々人は、利己的な欲望を追求する権利を放棄する代わりに、自らの安全を保障してもらうという契約を公権力(国家、王政)と交わします。そして、公権力は人々に絶対的服従を強いるのです。こうして生まれる国家をホッブズは、旧約聖書に登場する巨大な怪物であるリヴァイアサンに例えました。

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