ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン

 ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、オーストリア出身の哲学者です。
 ケンブリッジ大学で哲学や論理学を学び、科学的で厳密な言語の用法の確立を目指し『論理哲学論考』を出版しました。後には自らその立場を捨て、言語の社会性についての考察を進めました。後期は前期の研究とは一転し、言語を日常生活の中で考える日常言語学派の創始者となりました。

命題分析

 命題分析とは、ウィトゲンシュタインの最初の著作である『論理哲学論考』の中において確立された考え方です。命題とは「××は△△だ」という文をいいます。
 ウィトゲンシュタインは命題の真偽という考え方を導入しました。哲学的な命題は、人によって解釈が変化してしまい、そんなものはそもそも確かめようがないとウィトゲンシュタインは考えたのです。
 命題が事実に対応していれば真であり、そうでなければ偽となります。意味のある命題とは「私の妻はメガネをかけている」というような確かめられることのできるものだけをいいます。

語りえぬものについては沈黙しなければならない

「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」とは、『論理哲学論考』の終わりに書かれている言葉です。ウィトゲンシュタインは、世界や神秘といった確かめることができないことが言葉で表せるのか否かを考えました。その結論が上記の言葉です。
 例えば、倫理の命題は存在しないとウィトゲンシュタインはいいます。彼によれば倫理とは先験的なものです。「人は殺してはいけない理由は△△だ」という倫理命題に対する答えは、「人は殺してはいけない」ものだからとしか答えられないのです。

言語ゲーム

 言語ゲームとは、中期以降のウィトゲンシュタインの基本概念をいいます。中期以降、ウィトゲンシュタインは日常言語の分析に重点を移しました。
「彼は痛みを持っている」と言ったとして、他人の痛みを直接体験できず、想像してみるしかありません。内的な経験は外的な基準を必要とするというのがウィトゲンシュタインの結論です。こうした日常的な言語の使い方を分析しながらウィトゲンシュタインが出した考えが言語ゲームです。

言語論的転回

 言語論的転回とは、言語の意味や言葉によって名指されるものが先にあるのではなく、言語のやり取りが先にあるという発想をいいます。言語論的転回の代表者の1人がウィトゲンシュタインです。
 言語論的転回の先駆けとなったものにカントのコペルニクス的転回があります。コペルニクス的転回では、人間は物自体を認識しているわけではなく、人間は逆に外界に働きかけて、能動的に認識の対象を自ら作り上げているとしました。
 こうした逆転の発想をウィトゲンシュタインは言語論の世界にも持ち込んだわけです。
 例えば、日本では虹の色は7色だとされています。けれど虹の色は7色でないとする文化もあります。日本人は虹を見たときにその色を7色だと感じるのではなく、前もって言語で決定されている色の数を虹の中に見ているのです。言語論的転回とはこのような働きをいいます。

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