疾病利得 (gain from illness)

 精神的ないし身体症状の出現によって患者にもたらされる心理的利益をいいます。

疾病利得の種類

一次的利得

 おもに患者の内的な満足に関係します。症状の発現や維持によって何らかの不安や葛藤から解放されたり、欲求が満たされる側面をもちます。

二次的利得

 主として外的、現実的利益であり、症状出現後に二次的に獲得されるものです。
 たとえば、対人関係上の実際的利益がこれに当たります。その症状、その症状が生じているために、周囲の人たちの同情や温かな世話を受けることが二次的利得の例です。これは症状を用いて他者に影響を与えたり、他者を操作していることになります。ただし、意識的、意図的に演じられる詐病とは区別されます。
 賠償神経症にも、二次的疾病利得が作用していると考えられます。賠償神経症とは、災害等により心身に受けた損傷に対する賠償や補償をより多く、より長く得たいという願望が動機となる神経症をさします。

治療における課題

 疾病利得は、S.フロイトが示した5つの抵抗の中の1つである疾病利得抵抗をもたらします。
 症状改善に対抗する力としてはたらくことが多く、その扱いが治療に当たっては重要な課題となります。

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