解釈 (interpretation)

 精神分析における中心的な治療技法です。
 分析家が、クライエントの精神生活について分析し、それを言語化して患者に告げることです。これにより、クライエントの自己理解を促進します。

解釈の過程

 クライエントの精神生活に関わる理解をまとめる材料として、クライエントが語る、記憶、空想、願望、恐怖、およびさまざまな心的葛藤などがあります。それを元にクライエントがセラピストとの間にどのような関係を形成しているのか、それをどのように体験しているかについてセラピストが観察します。
 これらのものは面接の初期には、正しく理解されていない場合が多いです。その理由として、クライエントには十分に意識されていない、不正確あるいは歪められた形でしか理解されていない、などが挙げられます。

解釈において必要なこと

 解釈に先だって、セラピストはクライエントに関する一定の理解に達していなくてはなりません。
 また、前提要件として、クライエントとセラピストの良好な協力関係が必要となります。
 解釈を行う上では、適切な時機を選択する必要があります。解釈は、セラピストが一方的に行っても有益なものとはなりません。解釈が、意味のあるはたらきかけになるためには、クライエントに解釈を受け止めるだけの準備が必要です。そのような準備ができるようにするためには、セラピストは明確化や直面化といったはたらきかけによって問題を焦点化していく、直接関係にも注意を払う、解釈を行うのに適切なタイミングを見計う、などが必要となります。

解釈のタイミングによる効果の違い

 適切な時機に適切な解釈が行われると、直接の進行が促されます。それにより、新たな連想が浮かんだり、新たな記憶が想起されたりします。
 しかし、解釈の時機が早すぎたり、その理解が的外れな場合は、クライエントを傷つける、かえって面接の進行に対する抵抗を強めたりする結果を招くといった問題が生じます。
 逆に解釈が必要な局面で解釈が行われないと、クライエントの転移感情が強くなりすぎるなどして、面接そのものの中断を招く結果になることが起こり得ます。

解釈の種類

発生論的解釈

 現在の感情、考え、葛藤、行動などを、クライエントの過去の状況と関連付けることです。それはときには早期幼児期にまでさかのぼります。
 再構成は、発生論的解釈の一部をなすものです。抑圧されたり、想起されなくなった重要な過去の体験を、夢、自由連想、転移によって再現します。

力動的解釈

 ある特的の感情、行動、そのほかの心的活動に現れている、中核的な葛藤を明らかにすることです。

抵抗解釈

 面接過程の進行が妨げられていることを明らかにすることです。クライエントが面接の内外で示している防衛的態度により得られます。

転移解釈

 転移感情を明らかにしていくものです。面接の中でセラピストに対して抱いているクライエントの感情や態度から明らかにしていきます。両親などのクライエントにとっての過去の重要な他者に対して向けられていたものと関連付けます。

内容解釈

 防衛の結果、クライエントにとって無意識にとどまっている思考や観念や願望を明らかにしていきます

適切に解釈が行われた場合

 クライエントは自分の過去と現在について、それまでとは異なるやり方で理解することができるようになります。その理解の仕方は、解釈前より、歪みの少ないものです。それによって、感情、態度、行動に変化の可能性が生じます。

徹底操作

 解釈がクライエントにとって単純な知的な理解にとどまるのみでは変化は生じません。解釈に引き続いて、感情を伴った洞察体験が生じることで、ようやく変化の可能性が開かれます。
 そのような体験が生じるためには、繰り返し解釈を行い、クライエントとセラピストの双方が問題の理解を全身的に深めていく必要があります。
 徹底操作という過程を経てはじめて、解釈がクライエントにとって意味のあるものになります。

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